第28話 海外所在の無登録業者による「バイナリーオプション取引」詐欺

携帯端末の普及に伴い、いつでもどこでもインターネットを利用できる時代。

とくにスマートフォン利用者、中でも金融や投資に対する知識が乏しい若者へ「簡単に儲かる」といううたい文句で詐欺を働く海外所在の無登録業者による「バイナリーオプション取引」詐欺事件が増加しています。

point1 バイナリーオプション取引とは

バイナリーオプション取引とは、投資対象（例えば為替相場や株式指標、商品先物など）の値が、予め決められた期間に上がるか下がるかを予想する取引のことで、一見簡単そうに見えますが、実際は専門知識や高度なリスク管理力を必要とする大変難しい金融商品です。取引期間終了時（権利行使期限）に、予想が当たって事前に定めた権利行使価格を上回っていた場合（または下回った場合）は一定の金額を受け取ることができますが、予想が外れると支払った投資額を全額失うことになってしまう恐れもあるハイリスク商品です。

為替相場や株式指標を対象とするこのバイナリーオプション取引は、金融商品取引法上の店頭デリバティブ取引に該当するので、たとえ海外に所在する業者であったとしても、日本の顧客との間でバイナリーオプション取引を業として行う場合は、金融商品取引業の登録が必要となり、無登録でこの取引を行うことは、金融商品取引法違反となります。

point2 スマートフォンを利用する若者を標的にした無登録業者による詐欺事件が増大

最近、金融商品取引業の登録のない海外所在のバイナリーオプション取引業者が、スマートフォンを利用する若者を標的にして、繰り返し取引させる詐欺事件が増大しています。金融商品取引業の登録業者に対しては、金融先物取引業協会の自主規制ルールがあり、「取引開始にあたっては顧客の知識や理解の程度、投資経験などを確認しなければならない」、「最低取引時間は2時間以上とする」、「短時間のHigh-Low型は禁止」などとなっていますが、無登録の悪質業者はこのようなルールは無視します。海外所在業者としながらホームページには日本語表記だけで「誰でも儲かる投資術」、「上がるか下がるか（High-Low）予想をするだけ」、「投資の専門知識が無くても大丈夫」などと甘い言葉で誘い、取引時間も10分くらいの超短時間に設定し、スマートフォンを使って誰でも簡単に始められる取引のように装います。

point3 取引が始まると夢中に… 気が付いたときはすでに時遅し

無登録業者の行うバイナリーオプション取引の投資対象は、ほとんどが「円ドル」や「円ユーロ」などの為替相場で、超短時間の為替の動きを予想するものです。取引を開始する際は、「名前」、「生年月日」、「クレジットカード番号」を入力するだけ。もちろん無料で簡単に登録できます。

登録が完了すればスマートフォンを使って、即、取引開始。上がるか下がるかを予想するだけの一種の“賭け”のような取引はゲーム感覚で楽しめ、被害者を夢中にさせます。

取引金額は１回１万円くらいが多いようですが、被害に遭ったほとんどの人が何十回も取引を繰り返した結果、気が付いたときには、大損しているというパターンです。中には予想が当たって、利益が出ている場合もあります。ところが、利益分を手に入れようとして、業者に「出金申請」のメールを送ると「出金申請を受け付けました」と返事が届きますが、すぐに「出金申請がキャンセルされました」というメールが送られてきます。この意味のないメールのやりとりが続くだけで、実際には出金されることはなく、ここで被害者は、やっと詐欺だということに気が付くのです。

point4 無登録のバイナリーオプション取引業者とは絶対に取引しない

無登録業者とバイナリーオプション取引を繰り返し、「いつの間にか損失が大きくなっていた」、「解約できない」、「儲かっているのに出金できない」などの相談が全国の消費生活センターに多数寄せられています。

現在こうした海外所在の無登録業者については金融庁（財務局）が警告書を発出し、ホームページに名称を公表しています。こうした業者とは絶対に取引しないようにしましょう。困った場合はなるべく早く地元の消費生活センターに相談しましょう。