わたしを守る「生命保険」
5. 医療保険、がん保険、介護保険
(4) 医療保険は不要という考え方
医療保険は入院や治療による出費増や、収入減に備える合理的な手段ですが、医療保険は必要ないという考え方もあります。主に次のような理由からです。
理由1:日本は公的な健康保険制度が充実している
日本では、公的な健康保険への加入が義務付けられており、国民健康保険や勤務先の健康保険に加入していれば、病院で治療を受けたときの費用は、入院や手術も含めて、実際の費用の30%に抑えられます。また、ほとんどの治療に健康保険が適用されます。
入院するときに少人数の部屋や個室を選べば、差額ベッド代が1日数千円から十数万円に上るケースもありますが、そうでなければ、入院費用もそれほどかさみません。一定の貯金があれば、医療保険がなくても入院費用は払えるはず、と考えることもできます。
理由2:高額療養費制度もある
日本の公的な健康保険には、1か月の医療費が一定額を超えると、その分は健康保険が負担してくれる制度があります。これを高額療養費制度と呼びます。
この「一定額」は、年齢や収入によって違うのですが、70歳未満で一般的な収入であれば概ね8万円+αくらいで済みます。
ひとつの医療機関における医療費が1か月100万円かかったとすると、自己負担額は3割の30万円ですが、8万円+αを超えた分の約21万円余りが高額療養費として健康保険から払い戻されます。
医療費の自己負担額の上限が8万円+αで済むのなら、わざわざ民間の医療保険で備えるのではなく、その保険料分を貯金にまわして、そこから医療費を払うほうが合理的だとも考えられます。
高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から) (厚生労働省HPへリンク)
理由3:高齢で加入すると保険料がとても高い
医療保険は、年齢が上がるにつれて保険料が高くなるので、年齢によって、医療保険に入るべきかが変わってきます。あるシンプルな入院1日5,000円の医療保険(保険料を65歳まで支払うタイプ)は、保険料は25歳男性なら月1,904円です。これが、55歳男性だと月9,688円となり、年に約12万円、10年で116万円を払う計算ですが、30日間入院して受け取る金額はわずか15万円です。これなら、100万円を病気に備えて貯金しておくほうが合理的です。
25歳加入でも、65歳までの40年間で約91万円の保険料を支払う計算になりますが、月2,000円弱なら負担感は小さいでしょう。若いときは貯金も少ないので加入のメリットは相対的に大きくなります。
医療保険もがん保険も「入り方」に正解はない
医療保険に加入していても、入院や手術の費用を全額はカバーできないこともあります。かかった費用以上の給付金を受け取ることもあります。高額な保障を付けても、入院もせず手術も受けずに事故で亡くなったり、健康なまま天寿を全うするかもしれません。医療保険もがん保険も「入り方」に正解はないのです。
「これだけの保障に対して、年間で、またトータルでこれだけの保険料を支払う、それに納得できるか」ということをきちんと数字で見比べて考えましょう。自分の「納得感」を大切にしてください。