企業年金
第2部 各企業年金制度の詳細
第2章 企業型確定拠出年金
1.概要としくみ
確定拠出年金は、当時の確定給付型の企業年金が抱えていたさまざまな問題点を解決するために新しい年金制度として、2001(平成13)年10月から始まりました。
この制度は、アメリカの税法401k条項の特典を活かして普及している企業年金制度をモデルにしたので、「日本版401k」と呼ぶこともありました。それまでの企業年金は、将来受け取る給付の額を約束する「確定給付」でしたが、確定拠出年金は、支払う掛金だけを約束し、将来受け取る給付の額は約束しません。
確定拠出年金は、運用が悪化し約束している給付のために収益が足りず会社が不足分を補てんするといった、「確定給付」型の企業年金が抱える問題を気にすることはありません。また、企業会計面でも、退職給付債務を認識しなくてよいしくみです。
確定拠出年金には「企業型」と「個人型」の2つの種類があります。
「企業型」は、会社が導入を決めるもので、社員が加入を決めることはできません。会社が中心となり、社員から同意を得たルールに基づき制度を運営します。
次の図のように、企業型の確定拠出年金は、企業、社員(加入者)、運営管理機関、資産管理機関等が密接にかかわりあって、制度が成り立っています。運営管理機関は金融商品の情報を提供し、社員一人一人の口座を管理し、資産残高などを記録します。資産管理会社は実際にお金を預かり、社員それぞれが選んだ商品を売買し、給付を担当します。
この制度では、会社が社員のために掛金を払い、社員一人一人はそのお金で、預金や投資信託などの金融商品を選び、運用していきます。選べる金融商品は、会社ごとに異なります。給付は、会社とは関係なく、給付を受ける本人が自分で手続きします。
これに対し、「個人型」は会社ではなく、個人が自分の意志で加入する制度です。以前は「個人型」に加入できる人が限定されていましたが、今は60歳未満の公的年金の加入者であればほとんどの場合で加入できるようになりました。
参考確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の主な違い
現在の代表的な企業年金は確定給付企業年金と企業型確定拠出年金です。この2つの企業年金は社員にとってどのような違いがあるでしょうか?
確定給付企業年金 | 企業型確定拠出年金 | |
---|---|---|
給付額 | 給付額が約束されている | 給付額は資金運用によって変わる |
会社が破綻した時 | 影響を受ける場合もある | 影響を受けない |
資金運用 | 自分では運用しない | 自分で運用する |
途中退職の場合 | 退職時に一時金を受け取れる場合が多い | 原則、60歳まで受け取れない |
参考個人で確定拠出年金の掛金を支払う場合
社員個人が確定拠出年金の掛金を支払う方法は2つあります。1つめは企業型確定拠出年金で「マッチング拠出」をする、2つめは個人型確定拠出年金に加入する方法です。
(1)マッチング拠出
企業型確定拠出年金では、会社が規約にルールを決めれば社員が自分で確定拠出年金の掛金を拠出する「マッチング拠出」をすることができます。会社が拠出した掛金と同額までで、会社と自分の掛金の合計額が掛金の拠出限度額(図表2-2-3)の範囲内であれば、個人も掛金を支払うことができます。
社員が拠出した掛金は、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となるため、節税効果があります。
(2)個人型確定拠出年金へ加入
以前は個人型の確定拠出年金に加入できる人がかなり限定されていました。今は会社で企業型の確定拠出年金を導入していても、会社が個人型に加入できるルールを決めれば、個人型確定拠出年金にも加入することができます。
ただし、個人型確定拠出年金に加入し、自分で負担できる掛金額の限度は次のとおりです。
当図表では、確定拠出年金をDC(Defined Contribution Plan の略)と表記。