企業年金
第4部 企業年金の受け取り方~年金と一時金~
第1章 企業年金を年金で受け取るか、一時金で受け取るかを考えましょう
2.年金と一時金の選び方
年金か一時金かを選択できる場合は、まず、自分が受け取ることができる一時金の金額と年金額、年金の支給期間、年金をもらっている途中で死亡した場合にどうなるかなどを把握します。
次に、「利殖性」、「ライフプラン(使い道)」、「安全性」の3つのポイントから考えます。
利殖性 | ライフプラン(使い道) | 安全性 | |
---|---|---|---|
ポイント | 一時金額と年金総額の比較 (年金と一時金の損益分岐年齢を確認) |
一時金の場合の用途 | 年金支給の確実性 |
はじめに年金と一時金の損益分岐点となる年齢を確認してみましょう。その後、一時金としての使い道を確認し、最後に年金が確実に支払われるかを考えてみます。そして、自分にとって何が重要か、ポイントの優先順位、重要度を考えましょう。
年金が終身年金の場合には、生きている限り受け取り続けることができるので長生きに備えたい人は年金を選ぶとよいでしょう。また、お金の使い道が決まっている場合など一時金として受け取る価値がある場合や、年金の支給に不安がある場合は、一時金の受け取りを考えてみます。
それぞれのポイントは次のとおりです。
(1)利殖性
①終身年金の場合
生きている限り年金が受け取れる終身年金の場合は、受け取る一時金の額が年金の何年分に相当するかを計算して利殖性を確認します。単純に考えると年金を受け取り始めて一時金の金額以上に長生きすれば年金のほうがトクということになります。自分の寿命はわかりませんが、何年間年金を受け取ると一時金の額を上回るか(一時金額÷年金月額=年月数)を考えてみましょう。また、年金で受け取るよりも、一時金で受け取って自分で資産運用をしたほうが安心で利回りが高くなると判断する場合は、一時金で受け取るのもよいでしょう。
②有期年金の場合
終身年金と違い、年金の支給期間が決まっている有期年金の場合は、年金で受け取る場合の総受取額(年金月額×支給年月数=金額)と一時金額を比較します。企業年金の種類や会社によって年金を一時金に換算する率が違っています。つまり、年金額が同じでも受け取る一時金額は企業年金の種類や会社によって違ってくるのです。
次の表は会社ごとの一時金換算額の違いの例です。
○社 | △社 | □社 | |
---|---|---|---|
年金額 | 10万円/月 | ||
支給期間 | 10年 | ||
総受取額 | 12,000,000円 | 12,000,000円 | 12,000,000円 |
一時金 | 8,370,120円 | 9,321,920円 | 10,111,000円 |
一時金の年金換算年月数 | 6年11ヶ月 | 7年9ヶ月 | 8年5ヶ月 |
(2)ライフプラン
ライフプランから考えると「年金」の使い道は主に老後の生活費が中心です。一時金の場合は、老後の生活費のための準備資金にすることもありますが、住宅の修繕費、住宅ローンの返済やその他予備資金など使い道の自由度が高くなります。また、住宅ローンなどの借り入れがあり、利息を払っている場合は繰り上げ返済をすることで資産運用より効果が高い場合もあります。つまり、一時金で受け取るお金を資産運用して得る利益よりも、繰り上げ返済をしたことで払わなくてすむ利息の金額のほうがずっと多くなるということも考えられます。
ライフプランからみた年金、一時金の選び方は、一時金としての使い道があるか、企業年金以外の個人の資産がどの程度あるかなどから考えます。
(3)安全性
年金で受け取ることにしていたのに、その企業年金を運営している会社や基金などが破綻した場合は、予定していたとおりに年金を受け取ることができなくなる可能性もあります。実際、企業年金の制度の中に蓄えられた年金原資をみんなで分配して終わりにするしかないこともありました。
しかし、現在では、会社等が破綻をしても受け取る年金などの給付には影響がない(あるいは影響が少ない)しくみも作られてきました。それでも、確定拠出年金を除き、会社や基金が破綻した場合にまったく影響を受けないということは難しいのも事実です。
年金を支給している企業年金の種類や運営している会社に不安があるのであれば、一時金として受け取るほうが安全性は高いといえます。しかし、一時金で受け取り、自分で運用をする場合の運用リスクも考える必要があります。