企業年金
第2部 各企業年金制度の詳細
第4章 中小企業退職金共済制度/特定退職金共済制度
1.概要としくみ
中小企業退職金共済制度と特定退職金共済制度は、いずれも1959(昭和34)年から始まりました。「中小企業退職金共済法」に基づいてできたのが中小企業退職金共済制度、「所得税法」に基づいて出来たのが特定退職金共済制度で、どちらも、自社で退職金制度を準備することが難しい中小企業向けに設けられました。国や地方自治体などが制度をバックアップし、運営しているので安心感もあり、多くの中小企業が加入しています。
中小企業退職金共済制度は、廃止された税制適格退職年金の受け皿としても注目され、多くの中小企業が税制適格退職年金から中小企業退職金共済制度へ移行しました。その後、2014(平成26)年には解散する厚生年金基金からの移行も可能となり、中小企業退職金共済制度の加入基準を満たしていれば移行することができるようになりました。
中小企業退職金共済制度と特定退職金共済制度は、とても似ている制度です。違いは2つの制度の運営機関で、中小企業退職金共済制度は独立行政法人である勤労者退職金共済機構になり、また、特定退職金共済制度は特定の市町村や商工会議所のような団体になります。他にも多少の違いはありますが、ここでは中小企業退職金共済制度について説明します。
中小企業退職金共済制度は、会社が勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部(中退共本部)と「退職金共済契約」を結び、毎月、金融機関を通じ掛金を納めます。そして、社員が退職した時は、退職した社員本人が中退共本部へ請求の手続きをして、直接中退共本部からその社員に退職金が支払われます。
2.給付と手続き
(1)給付内容
中小企業退職金共済制度の給付は退職金として、「基本退職金」と「付加退職金」の2つがあり、両方を合計した金額を受け取ります。
会社が支払う掛金によりいくら受け取ることができるかは違ってきます。中小企業退職金共済事業本部(中退共本部)のホームページから試算することもできます。
退職金のシミュレーション(中小企業退職金共済事業本部HPへリンク)
①基本退職金
受け取る金額は、掛金を支払った時期、月額掛金、納付月数に応じて決まります。運用予定利率は、現在は1.0%となっていますが、掛金を支払う時期によって違っています。この運用予定利率は、掛金を支払った時の利率が退職金を受け取るまで続きます。そのため、予定利率が良かった時に掛金を支払っている場合の受け取り額は、現在の1.0%より多くなります。今、退職するといくら受け取ることができるかについては、年に一度、制度の事務局から会社へ書類が届きます。また、短期で退職した場合は利息が付かないばかりか、次の表のようになります。
掛金納付期間 | 支給額 |
---|---|
1年未満 | 掛捨て(受け取ることができない) |
1年以上 2年未満 | 掛金納付額を下回る |
2年以上 3年 6ヶ月以下 | 掛金相当額 |
3年 7ヶ月以上 | 基本退職金+運用利息等が加算(=付加退職金) |
②付加退職金
運用が予定運用利率を上回った場合にかぎり支給される上乗せ給付です。この制度は長期勤続した人を優遇するようになっており、図表2-4-2にあるように掛金を納付し始めてから3年7ヶ月以上となった場合に加算されます。この付加退職金は毎年見直され、近年では上乗せがない、支給率が「0」の年も多くなっています(図表2-4-3)。
年度 | 支給率 |
---|---|
平成19年度~25年度 | 0 |
平成26年度 | 0.0182 |
平成27年度 | 0.0216 |
平成28年度 | 0 |
平成29年度 | 0 |
平成30年度 | 0.0044 |
③死亡一時金(特定退職金共済制度の場合のみ)
加入者が死亡した時に遺族に支払われる給付です。給付の内容は死亡した時点で退職したとして計算される金額に一定額が加算されます。
(2)手続き ~どうやったらもらえるのでしょうか?~
退職金の請求手続きは、退職した本人が、直接、中退共本部に行います。退職時に会社から手渡される退職金共済手帳にある「退職金(解約手当金)請求書」に必要事項を記載し、必要に応じて住民票や印鑑証明を準備して、中退共本部給付業務部へ郵送してください。
退職した際の手続きを行う場合(中小企業退職金共済事業本部HPへリンク)
(3)受け取る時期
中小企業退職金共済制度は、定年退職、中途退職など、退職の時期にかかわらず、加入後1年が経過後、会社を退職すれば、退職一時金を受け取ることができます。
また、分割で受け取る場合は60歳以上で退職した場合に次の要件を満たしたときになります。
要件:
- 退職一時金額が80万円以上
- 本人が希望する