企業年金
第2部 各企業年金制度の詳細
第1章 確定給付企業年金(規約型/基金型)
2.給付と手続き
B.確定給付企業年金(基金型)
(1)給付内容
基金型の確定給付企業年金の給付は、それぞれの企業年金基金ごとのルールによって違います。法律で最低限守らなければならない条件は規約型も基金型も同じです。しかし、厚生年金基金からの移行という経緯等も含めて、条件面で主に次のような特徴があります(強調文字は、規約型と異なる主な部分)。
給付 | 条件 | |
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老齢給付金 | 老齢年金 |
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選択一時金 |
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脱退一時金 |
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障害給付金 | 任意給付 |
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遺族給付金 | 任意給付 |
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(2)手続き ~どうやったらもらえるのでしょうか?~
基金型の給付の手続きは、基本的には、基金と本人との間で行われます。退職後に給付手続きをする場合は、基金の指示に従って自分で書類を作成し、基金で手続きをします。手続きの方法は、退職時期や基金のルールによって違ってきます。それぞれの基金に確認してください。基本的な給付手続きは、退職のパターンによって次のように分けられます。
①定年退職の場合
退職時に、企業年金基金に手続きをとり、年金で受け取るか、一時金で受け取るかを選択します。書類に必要事項を記載し、企業年金基金へ手続きします。
②中途退職の場合
企業年金基金へ手続きをします。その際に必要な情報や書類については企業年金基金の窓口の担当者に確認してください。
③在職中に企業年金の制度が変更になり退職した場合
在職中に他の企業年金から確定給付企業年金に変更後、退職した場合
在職中に、他の企業年金制度(厚生年金基金や税制適格退職年金など)から確定給付企業年金に変更した場合は、会社が決めた変更方法などにより、主に次のように分類できます。
なお、企業型確定拠出年金から確定給付企業年金へ制度変更する場合は、社員個人の資産である確定拠出年金の資産を確定給付企業年金へ移換することは基本的にありません。変更後の確定給付企業年金の手続きは上記「①定年退職の場合」と「②中途退職の場合」と同様です。
退職時の手続きは分類ごとに次のようになります。
変更時点で一時金を受け取る
在職中に企業年金の制度が廃止になり、制度に貯めてあった資金をその時点で受け取った後、確定給付企業年金に加入した場合は、変更前の制度の清算は終わっています。新制度になってから退職した場合は、確定給付企業年金の手続きだけをします。
年金資産を企業年金連合会へ移換
在職中に企業年金の制度が廃止になり、制度に貯めてあった資金を企業年金連合会へ移換する場合があります。この場合は、変更後に加入した確定給付企業年金の手続きだけでなく、公的年金の支給開始年齢になったら企業年金連合会での手続きが必要になります。
確定給付企業年金へ年金資産を移換(積立不足なし・積立不足を補てん済み)
このケースは、基本的に確定給付企業年金だけに加入していた場合と同じです。変更前の制度の手続きは必要ありません。変更後の確定給付企業年金の手続きは上記「①定年退職の場合」と「②中途退職の場合」となります。
確定給付企業年金へ年金資産を移換(積立不足あり)
このケースは、積立不足分の取り扱いが会社によって違います。よくあるのは、不足額を退職時に会社から受け取るケースです。この場合は、自分で手続きをするのではなく、会社が退職金として支給手続きをするのが一般的です。
変更後の確定給付企業年金の手続きは上記「①定年退職の場合」と「②中途退職の場合」と同様です。
積立不足とは~(別ウィンドウで開きます)
在職中に確定給付企業年金から他の企業年金に変更後、退職した場合
会社として企業年金の制度を変更する場合、確定給付企業年金から変更できる企業年金は企業型確定拠出年金のみとなります。
確定給付企業年金から確定拠出年金へ変更したあとに退職する場合の手続きは、変更後の確定拠出年金の手続きのみとなります。転職の手続き、給付を受ける手続きともに、自分自身で運営管理機関を通じて手続きをします。変更前の確定給付企業年金の手続きは年金資産の扱いによる違いにより、次のようになります。
確定給付企業年金の資産を企業型確定拠出年金へ移換した場合
この場合、変更前の確定給付企業年金の資産は、変更後の確定拠出年金の社員個人の口座にまとめてあります。退職時や給付の手続きは企業型確定拠出年金で必要な手続きをします。
変更時点で確定給付企業年金の資産を受け取った場合
変更時点で確定給付企業年金の資産を受け取った場合も、変更後の確定拠出年金の手続きだけをします。退職時や給付の手続きは企業型確定拠出年金で必要な手続きをします。
(3)受け取る時期
①定年退職の場合
確定給付企業年金の老齢給付の受け取り時期は60歳~65歳までの間で規約で決めることになっています。基金型は「企業年金基金」の規約で老齢給付金や脱退一時金の受給時期が決まります。規約型は会社の定年年齢に合わせることがほとんどですが、企業年金基金は複数企業が加入している場合も多く、各社の定年年齢が異なる場合もあるので、公的年金の支給開始時期に合わせている場合が多くなっています。
②定年後も働いている場合
定年後も嘱託などで働き続ける場合も定年退職の場合と同じ取り扱いです。
③中途退職の場合
定年前に退職した場合は、退職時の年齢や加入期間により脱退一時金か、老齢給付金が受け取れます。脱退一時金は退職時に受け取れます。また、企業年金基金ごとでルールの違いはありますが、50歳以上かつ勤続20年以上で退職し老齢給付金が受け取れる場合は、退職した時ではなく、60歳~65歳の間で企業年金基金が決めた年齢になった時に受け取れます。