企業年金
第4部 企業年金の受け取り方~年金と一時金~
第2章 企業年金ごとのポイント
企業年金の給付のうち、自分で受け取り方を選ぶことができる場合のポイントをみていきましょう。
1.確定給付企業年金(規約型/基金型)
(1)自分の年金や一時金の内容を把握する
確定給付企業年金の老齢給付金の場合は、年金でも一時金でも受け取れる場合があります。この場合は、年金額、年金支給期間、保証期間の有無、一時金で受け取る場合の金額を確認して検討します。
(2)年金の支給条件を理解する
年金の支給期間には一定の期間だけ支払われる有期年金と一生涯支給される終身年金があります。確定給付企業年金では、会社や基金ごとに、最低5年以上支給される有期年金の場合や終身金の場合などがあります。
また、年金には支給条件によりいくつかのタイプがあります(図表4-2-1)。終身年金には、早くに死亡しても一定の期間は遺族に支払いが保証されているものもあります。もし、保証期間がなくても、保証期間分の年金を遺族一時金として支給する場合が多くなっています。自分の年金の支給条件をきちんと理解しておきましょう。
有期年金 | 確定年金 | 一定期間中、本人の生死にかかわらず年金が支払われる |
---|---|---|
有期年金 | 一定期間中、本人が生存している限り年金が支払われる | |
保証期間あり | 一定期間中、本人が生存している限り年金が支払われる ただし、保証期間中は本人の死亡後は遺族に年金が支払われる |
|
終身年金 | 終身年金 | 本人が生存している限り年金が支払われる |
保障期間あり | 本人が生存している限り年金が支払われる。 ただし、保証期間中は本人の死亡後も遺族に年金が支払われる |
(3)年金と一時金を利殖性で比較してみる
単純に年金で受け取る場合の総受取額と一時金の額を比較してみます。実際に比較してみると、年金の総受取額より一時金の額は少なくなります。それは一時金が年金より早く受け取ることになるので、早く受け取った期間分の利息額相当分が差し引かれるからです。
○社 | △社 | □社 | ○△□社 | |
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年金額 | 10万円/月 | |||
支給期間 | 10年確定年金 | 10年保証終身年金 | ||
年金の総受取額 | 12,000,000円 | 12,000,000円 | 12,000,000円 | 24,000,000円(80歳まで) 12,000,000円(最低) |
一時金の受取額 | 8,370,120円 | 9,321,920円 | 10,111,000円 | 9,321,920円 |
一時金の年金換算年月数 | 6年11ヶ月 | 7年9ヶ月 | 8年5ヶ月 | 7年9ヶ月 |
また、利殖性を考える時には、税金の取り扱いが違うことにも注意しましょう。年金として受け取る場合は「雑所得」として「公的年金等控除」の対象となり、一時金の場合は「退職所得」として「退職所得控除」の対象となります。
公的年金等控除について(国税庁HPへリンク)
退職所得控除について(国税庁HPへリンク)
(4)従来の安全性の問題を改良した確定給付企業年金
従来の確定給付型の年金制度である税制適格退職年金や厚生年金基金は、給付の安全性に問題を抱えていました。しかし、確定給付企業年金は、給付がきちんとできるだけの年金資産があるかを監視するしくみが強化されています。
そうはいっても、掛金を支払う会社が破綻した場合、一般的に、破綻時点で制度にある年金資産を分配することになり、本来受け取ることが約束されていた年金が一時金となったり、受取額が減額されてしまう場合も多くあります。
会社や基金が破綻した場合の影響は、年金の支給期間の決まっている有期年金より終身年金のほうが大きくなります。だからといって、安易に一時金で受け取るのではなく、掛金を支払う会社の経営状況、基金の運営状況の様子を確認してみてください。