金融商品なんでも百科
(平成30年4月)
預貯金
外貨預金と外国為替相場
預貯金の最大の特徴は、元本保証にあることはこの章の冒頭でも述べましたが、外貨預金の場合、外国為替相場の動向いかんによっては日本円換算した場合に元本割れすることがあり、この点、他の預貯金商品とは大きく異なります。これは、外国為替の変動に起因する為替差損が原因ですが、その影響については、外貨預金に限らず、外貨建て金融商品(外債、外貨建投資信託など)に共通する特徴です。ここで外国為替の持つ特性を整理すると次のとおりです。
TTS、TTBと為替手数料
外貨建て金融商品を購入する場合、もともと外貨を保有していなければ、そのときどきの外国為替相場で両替をすることになります。
外国為替相場にはいくつかの種類がありますが、円と外貨の両替を行う場合は対顧客電信売相場(TTS)と対顧客電信買相場(TTB)が用いられるのが一般的です。TTSとTTBは、インターバンク相場(注)などを基準に、各金融機関が為替手数料を加味して自由に決定しています。
なお、為替手数料については、ドルやユーロなど通貨によって差があり、また銀行によっても差があります。さらに取引金額や取引内容によって為替手数料に格差を付ける金融機関もあります。
(注)インターバンク(銀行間)相場とは、銀行など専門業者間での取引に用いられる相場です。通常TVのニュースなどで報じられる外国為替相場はこのインターバンク相場をさしていることが多いようです
TTS(対顧客電信売相場)
金融機関が外貨を売るときの為替相場です。顧客からみれば、円を外貨に替えるときの相場です。基準となる相場に一定の為替手数料を加えて表示されます(下図では、基準相場120.75円/ドルにプラス1円/ドル)。
基準相場に変動がない場合でも、コスト(TTSとTTBの差)が発生
外国為替証拠金取引(FX)について
外国為替証拠金取引は、FX(ForeignExchange)と呼ばれており、一定の証拠金を担保に外貨の売買を行う取引のことで、証拠金額の何倍(25倍が上限)もの取引が可能です。小額の証拠金で取引でき、高いリターンが得られる場合がある半面、相場が予想と反対の方向に大きく振れた場合には、大きな損失を被るリスクがある取引でもあります。
そのため、為替相場の価格変動リスクや流動性リスクなどのリスクを十分認識した上で、自らの責任で適切な投資判断を行うことが必要です。また、ロスカットといった損失管理機能を使いこなすことも求められます。
取引の仕組みが十分理解できないときは、取引しないことが大切です。外国為替証拠金取引は金融商品取引法に規定される取引の一つで、金融商品取引法に基づく登録を受けた業者でなければ行うことができません。登録を受けていない者からの勧誘には十分注意すると共に、登録を受けた業者と取引を行う場合であっても、その業者の信用力を慎重に判断し、取引内容をよく理解することが重要です。
顧客保護と業者のリスク管理を強化する観点から、平成22年2月に業者は預けられた証拠金を自己の財産と区分して全額金銭信託することが求められました。また証拠金規制も導入されました。具体的には、個人の場合、平成23年8月からは想定元本の4%以上の証拠金の預託が必要(証拠金の25倍までの取引に制限)です。
外国為替証拠金取引の収益は一般に、申告分離課税(税率は一律20.315%)となるので確定申告が必要です。
TTB(対顧客電信買相場)
金融機関が外貨を買うときの為替相場です。顧客からみれば、外貨を円に替えるときの相場です。基準となる相場に一定の為替手数料を差引いて表示されます(上図では、基準相場120.75円/ドルからマイナス1円/ドル)。
基準相場の変動によって為替差益・為替差損が発生
為替差益・為替差損、為替手数料があるため、円換算の利回りは、外貨建てで表示された金利・利回りと一致しないのが一般的です。
外貨預金の為替手数料にご注意!
円預金の低金利が続く中、外貨預金の高金利に惹かれる人も少なくありません。
たとえば「ニュージーランド(NZ)ドル金利5%、為替レートは65円、為替手数料は1ドルにつき往復5円」これはどう理解したらいいでしょうか。仮に100万円をNZドルに換えて為替レートが変わらなければ、100万円は1年後に5万円の利息から2割*の税金を引いた4万円が上乗せされて104万円になります。
ところが為替手数料が加わるとどうでしょうか。まず100万円をNZドルに換えると、1ドル65円+為替手数料片道2.5円=67.5円が交換レートなので、14,815ドルになります。これに税引後4%の利息がつくので、元利合計は15,407ドルです。
さて、これを円に換えると、為替レートが変わらないとすれば、1ドル65円、為替手数料片道2.5円=62.5円となるので、962,937円になります。あれ、実質4%も利息がついているのに、元の100万円に37,063円も足りない!
この原因は為替手数料です。「1ドルにつき往復5円の手数料」とは、1ドル65円の為替レートが変わらなければ5円÷65円×100=7.7%、つまり実質4%の金利よりも高いのです。これでは初めから為替差益がなければ損するということになりますね。為替手数料は銀行によって、また、外貨の種類によっても異なるので、十分注意してください。
※復興特別所得税を除く
損益分岐点の考え方
外貨建て金融商品では、金融商品自体が利益を生んでも為替差損がその利益を上回ればトータルとして損を被るということがあります。したがって、換金時に損も益も出ない為替相場が具体的にいくらなのかを知ることが重要です(損も益も出ないような為替相場を損益分岐点と呼ぶことにしましょう)。損益分岐点は、換金時の実際の為替相場が損益分岐点よりも円高なら損を被り、円安なら益を得るということが一目でわかる目安になります。
損益分岐点を計算してみる
次の例で損益分岐点を計算してみましょう。預入期間6か月の米ドル建て定期預金で、金利は年4.50%(6か月換算2.25%)、100万円を預けることにします。
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預入時点の為替相場(TTS)は121.75円/ドルでした。
100万円は、8,213.55ドルに相当します。 - 8,213.55ドルを6か月間預けると、利息が184.80ドル(=8,213.55×4.50÷100×0.5)つくことになります。ただし、利息は20%*源泉分離課税なので、8割にあたる147.84ドルが受取利息です。したがって、満期時点の受取金額は、ドル建てで8,361.39ドルとなります。
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損益分岐点は、円建ての受取金額が預入金額の100万円に一致する為替相場(TTB)を考えると、下記のような関係になります。
この例では、受取時のTTBが119.60円/ドルなら、損も益もなく預けた100万円が戻ってくることになるわけです。
※復興特別所得税を除く
米ドル建て定期預金で100万円を運用
預入期間6か月、金利 年4.50% (小数点第2位未満を四捨五入。)
※計算例。端数計算などの違いにより、以下にしたがって計算しても、現実の損益分岐点と異なることがあります。
円建て金額に目標を置いたときの為替相場
損益分岐点は、円建ての受取金額と円建ての預入金額が一致するように計算しましたが、③の円建て受取金額を目標とする金額に変えれば、目標とする円建て金額を受取るための為替相場(TTB)を求めることができます。
損益分岐点と同じ例で、目標金額を105万円とすると、下図のように計算されて、受取時のTTBが125.58円/ドルとなることがわかります。