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2018年度 先生のための金融教育セミナー

【高等学校向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会1

進行・コメント:
教職員支援機構 次世代教育推進センター 大杉 昭英 センター長
実践発表およびワークショップ(1)

「新科目『公共』における主体的・対話的な深い学びを実現する授業展開」
(1〜3年 政治・経済、現代社会、公共)
東京都立西高等学校 篠田 健一郎 指導教諭

実践発表

東京都立西高等学校では、「総合的な学習の時間」を活用して、高尾山への清掃登山に始まり、企業の方にきていただいてのCSR(企業の社会的責任)の学習「ボランティア活動を考える」、夏休みのボランティア実践、「障がいをもつということを考える」など、さまざまな取り組みを行っています。今日は、第1学年の年度末の12月から3月までに実施している「NPOをつくろう」を紹介します。

この取り組みのねらいは、自分に何ができるか、自分にできる社会貢献は何か、社会から自分は何ができるようになることを期待されているか、を考えさせることです。まずはNPOから講師を派遣していただき、NPOについての理論的学習を行います。各クラス6チームを編成し、本校の生徒ならではの考えでNPOの企画書を作成します。プレゼンテーションを行い、クラスの代表チームを選出し、3月に視聴覚ホールで各クラス代表のプレゼンを行います。そのときに、外部の方から指導講評をいただく場合もあります。

生徒の作品例として、「マイノリティのスポーツを紹介する」、「フリーマーケットを支援する」、「農家が6次産業化できるように応援する」、「訪日外国人観光客に使ってもらうアプリを開発する」などがありました。「女性に護身術を教授する」は、空手や合気道が好きな生徒が、自分たちのパフォーマンスを見せたいために、「男女共同参画と安全な町づくり」と結びつけて企画を立てたもので、本音と建前を上手に組み合わせていて、なるほどなと感心しました。

生徒はこの取り組みで、教科教育では生み出せない総合的な力を発揮することになります。各教科で学んだことを総動員しないと、前に進まないからです。一人ひとりの力に限界はあっても、グループで話し合うことで引き出されるアイディアがあり、それまで気づかなかった視点が見えてきます。言葉の持つ力を再認識したり、討論することの大切さを感じたり、新たな自分を見出せるなど、生徒たちにとって有意義な取り組みだと思います。休み時間はもちろん、放課後も使って生徒たちは自主的に取り組んでいました。自由な校風で知られる本校ならではの活動です。

ワークショップ

「NPOをつくろう」をテーマに、参加者がグループに分かれ、NPOの名称、企画、コンセプト、企画の強みなどを考え、プレゼンテーションを行っていただきました。他のグループから最も高い評価を集めたグループの企画は、「北海道札幌市の子ども食堂で、地域の人たちを巻き込もう」というものでした。
篠田先生から、「今回は限られた時間でのワークショップで大変だったと思います。しかし、時間がない、お金がない、人もいないところで成果をあげるのが実社会です。本校の生徒は日々、そのような体験学習をしています」とのコメントがありました。

コメント

大杉昭英先生より、次のようなコメントがありました。

篠田先生の発表は「NPOをつくろう」という高校1年生の実践例でした。現実のNPOは、企業などから支援を受けるために、プレゼンテーションの場で、社会貢献の意義などさまざまなことを納得してもらわなければならない苦労があります。こうした学校での活動は模擬的なもので、本当の意味での資金面の苦労はありませんが、教育的な意味は非常に高いと思います。NPOをつくる。そのために企画を考え、プレゼンをする。その流れで、総合的な学習の時間を使うことに大きな意味があります。いろいろな教科で学んだことを、活かすことが求められます。

また、ワークショップでポスターセッションが行われました。人の視線は、左から右、右から左下、左下から右の流れで、見て考えるという「Zの法則」があります。教科書の写真の並びはそのようになっています。いろいろな心理学的知見を総合して、紙面が構成されています。先生方もそれぞれの経験を活かして、ポスターを作られたと思います。それも知の総合です。知見を総合させ、一つのものを作るという面白さ、ストラテジーがよく現れていたと思いました。

高等学校分科会1の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「日田市をさらに元気にする方法をみんなで考える」(2年 現代社会)
大分県日田三隈高等学校 窪田 一真 教諭

実践発表

大分県日田市は、福岡県との県境にあります。現在の人口は約68,000人ですが、2040年には49,000人に減少すると言われています。今日は、「日田市をさらに元気にする方法をみんなで考える」というテーマで行った4時間の授業を発表します。

1時間目は、生徒に大きなテーマ、「何のために生きているのか」、「何のために学習しているのか」、「自分が幸せならばそれでよいのか」、「身の周りに困っている人はいないか」を問いかけました。生徒からは概ねプラスの答えが返ってきました。「嬉しい気持ち」「幸せな状態」「戦争がなければ平和なのか」といったことについて考えました。2時間目は、日田市がこの先どんな状況になるか、人口、歳入、歳出の面から捉えました。人口減少による一番の大きな問題は、地方交付税交付金が大きく減ることです。3時間目は、「ではどうすればよいのか」と具体的な案をまとめました。生徒たちからは、「特産品を開発する」、「インスタでまちづくり」、「交通機関の整備」、「自然を観光開発」、「AIやIoTを使った産業の効率化」といった案があがりました。4時間目はグループ発表で、公開授業となりました。

1時間目に生徒に行った「困っている人はどんな人?」「それに対して何ができる?」というアンケートの結果を見ると、行政が所管するようなことが並んでいます。「自分でやる、自分が解決する」という意識がまだ子どもたちの中に芽生えていないように思いました。日田市にはコンビニがありません。「自分が」ではなく「誰かがつくってくれる」という感覚を多くの生徒が持っていることがわかりました。公開授業を終えて、地元の新聞に生徒の「楽しかった」という感想記事が載りました。私としては、それだけで終わらずに、「いつか自分が何かできる」、「自分がよくしていこう」という気持ちに繋がってくれたらいいなと思っています。今後の取り組みとしては、日田市役所の地方創生推進課とタイアップした事業を模索しています。

ワークショップ

参加者がグループに分かれ、生徒の学習活動を体験していただきました。「現在7万人の人口が20年後に5万人になる町」を想定して、現状維持あるいは現状以上になるための施策を考えました。グループごとにテーマを振り分けられた参加者からは、「昇給ストップ、機械化、採用減などで市役所の歳出を削減する」、「医療費の無償化」、「避難所の整備による災害に強い町づくり」などの意見があがりました。窪田先生からは、「人口が減少している町は、地域の人の繋がりを強くしていくことが大事です。地域が繋がっていれば解決できたかもしれない問題があるかもしれません」というコメントがありました。

コメント

大杉昭英先生より、次のようなコメントがありました。

窪田先生の「日田市をさらに元気にする方法をみんなで考える」という発表は、地域活性化について高校生が一生懸命に提案をする授業、学校の学びをどう地域に活かすか、というものでした。私からの提案ですが、「誰が負担して、誰が恩恵を受けるのか」という視点が加わっていると非常に面白いかなと思います。お金の流れをどう考えるかという視点です。

窪田先生と篠田先生で共通しているのは、アメリカでは「サービスラーニング」
と言われている、子どもたちが学校で学んだことを地域社会で活かす活動となっている点です。子どもたちのコンピテンシー、すなわち資質能力を育て、学んだことが社会と結びつくという点を、お二人は重視されています。そしてお二人とも個々の教科目標を達成しつつ、学校全体としてカリキュラムマネージメントを実現できたことだと思います。ワークショップでは、「こうした方がよいのではないか」と改善点を交えながら議論が盛り上がり、非常に有意義だったと思います。

高等学校分科会1の模様②

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  • 早稲田大学名誉教授(工学博士) 東日本国際大学副学長 エジプト考古学者 吉村 作治さん
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