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2018年度 先生のための金融教育セミナー

【小学校・中学校向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

中学校分科会1

進行・コメント:
教職員支援機構 次世代教育推進センター 大杉 昭英 センター長
実践発表およびワークショップ(1)

「『起業体験学習』加納inフェスタをみんなの手で成功させよう!!」
(3年 社会科、技術・家庭科)
宮崎市立加納中学校 永井 和代 教諭/井上 直樹 教諭

実践発表

中学校3年生の社会科、技術・家庭科で行った起業体験学習「加納inフェスタをみんなの手で成功させよう!!」について発表します。私たちは、起業体験「加納inフェスタ」を題材にして、社会科、技術・家庭科の「クロスカリキュラム」を行っています。「社会、技術・家庭科の視点からのねらい」は、「企画・準備・運営などに見通しをもって取り組む。生産者や消費者が必要とする情報を整理して商品の選択や購入の方法を工夫する」です。「技術・家庭科の視点からのねらい」は、「家庭分野で学んだ『子どもの成長』、『食生活』、『衣生活』を活かして消費者に買ってもらえる商品をつくる」。「社会科の視点からのねらい」は、「消費や労働、生産と金融の仕組みや働きについて理解する。市場経済の基本的な考え方を身につける。生産者と消費者の関係について多面的、多角的に考察できるようにする」です。

「加納inフェスタ」は、加納小学校のバザーが始まりで、そこにまちづくり協議会が参加するようになり、現在に至ったと聞いています。子どもたちは、企画書の作成、企画の発表、投票・決定を行います。最終的に、企画は、うどんとクジ引きゲーム、カップケーキとストラックアウトゲーム、おにぎりと惣菜、キッキングスナイパー(ボールを蹴って缶などを倒すゲーム)、豚汁とフリーマーケットに決まりました。資金はPTAから融資してもらおうと考え、PTAの会長と会計の方にきてもらい、事業計画書を説明し、融資してもらいました。このあとの生徒の活動として、技術・家庭科の時間で足りない分を総合的な学習の時間で補いながら、看板や試作品の作成を行いました。

「加納inフェスタ」当日は、早朝から外で景品を並べ、ゲームの準備を着々と進めました。フェスタが始まると、社会科に繋げるために、会計係は時間ごとの売上げを記入しました。また、最初は与えられた場所だけで販売していましたが、売り歩く作戦に変えたり、容器に相手が嬉しくなるようなことを書いて販売したり、最後の一滴まで無駄にしないで売るなど、生徒たちの工夫や努力が見られました。売上げを全学級で計算すると、25万円の利益が出て、生徒たちは達成感でいっぱいでした。

成果として、実際のお金を使用することで、金融をより身近に感じることができただけでなく、生産者や消費者としてのあるべき姿や負うべき責任、果たすべき義務などを、緊張感をもって学習することができました。さらに販売当日をイメージさせ生産活動を行ったことで、予算に見合う商品の作成や、販売方法の工夫、付加価値のあり方などを考え、判断できるようになりました。

ワークショップ

参加者がグループに分かれ、「加納inフェスタ」のように「資本主義ゲーム」を行っていただきました。加納中学校の授業でも行っているゲームです。 このゲームは、最初に20万円が各グループに配られ、それを使って材料(紙)と道具(はさみ、コンパス、テープなど)を買い、製品(六角形、半円、フタ付き円柱など)を作って売り、お金をどこまで増やせるか競い合うものです。材料、道具の価格は、需要と供給に応じて変化します。製品の価格も、作るのが難しい製品ほど高く、出来が悪いと安くなり、供給が増えると安くなります。 参加者は、まず作戦を考え、市場の変化に応じて作戦を適宜変更しながら、全力で製品を作り、競い合いました。ゲーム後には、「作戦の重要性がよくわかった」、「アイデアを出し、創意工夫できるところが楽しい」、「これをやれば生徒も企業経営に関心が向く」などの感想が聞かれ、「授業でとり入れてみたい」とする参加者が大半でした。

コメント

大杉昭英先生より、次のようなコメントがありました。

「加納inフェスタ」は、主体的・対話的で深い学び、社会に開かれた教育課程、教科間連携であったことがおわかりだと思います。インセンティブが高く、主体的に取り組み、一生懸命に考えてフェスタを実行されました。地域のイベントに参加すること自体が、地域と学校が結びついていることを表しています。それを学校の教育計画として組み込んだところに、良さがあります。

さらに、社会科と技術・家庭科の連携がとてもうまくいっているケースです。フェスタを成功させ、地域にも貢献しています。オーセンティックラーニングという言い方がありますが、現実に近い学びを行っています。

ワークショップは皆さん十分に楽しまれたと思います。大変よくできたゲームでした。最後に、「小売店」と「消費者」の役割の人にとっても何かインセンティブがあればよかった、との意見もありました。でも、今回のゲームでは脇役ながらも価格情報を握る立場にあったのではないでしょうか。先生方が一番困った、焦ったことは何でしたか。「時間」でしょう。指導要領の解説にもありますが、「時間」と「情報」が経済活動の中で大きな役割を果たします。急に物が高くなる、あるいは安くなるというように状況が刻々変わっていく中で、どう判断していけばよいのかということがこのゲームのポイントでした。それを客観的に見ることができたのが「小売店」と「消費者」だったと思います。

先生方に考えていただきたいことは、このような演習を経済学習(概念の学習)の前にやるのか、あとにやるかということです。先に演習をやったあとで概念化するか、あるいは概念化したことを演習で具体化して深く理解するか。どちらがよいかは昔から議論がありますが、ぜひそのあたりも検討課題にしていただければと思います。

中学校分科会1の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「経験学習モデルによる株式投資と経営の授業〜金融教育における主体的な学習活動の実践〜」(3年 現代社会)
本郷中学校・高等学校 横山 省一 教諭

実践発表

これから紹介するゲームは、本郷中学校の3年生社会・公民的分野の授業で2016年度に実践したものです。「生産と労働」(4時間)、「価格の働きと金融」(5時間)の二つの単元の総まとめとして、最後の9時間目にこのゲームを行いました。授業の設計については、『金融教育プログラム』を参考にして、1. 企業の資金調達方法について、2. ハイリスク・ハイリターンおよびローリスク・ローリターンであること、3. 情報を適切に理解したうえで意思決定を行うことの重要性、の3つを理解させることをねらいとしました。

ゲームは、生徒を経営者(1人)、株主(3人)、銀行(2〜3人)の3つに分けます。ルールは、経営者は5つのプロジェクト(クジ引き)を実施するために、8万円以上の資金を株主や銀行から調達しなければなりません。資金は株主が1人3万円、銀行が8万円持っています。銀行は金利10%で融資を行い、プロジェクト終了後に返済を受けます。経営者はリターンから銀行への返済を除いた残りから20%の報酬を受けます。株主は利益から配当を受け取ります。

このゲームが盛り上がるのは、経営者がクジを引く場面です。クジは5種類あり、それぞれリターンの期待値が異なるのがポイントです。プロジェクト終了後は、自分の最終的な所持金がわかりますので、それを計算させました。次に、経営者、株主、銀行それぞれの役割で集まり、1位と最下位を調べさせました。1位には商品としてお菓子を、最下位にはペナルティで簡単なレポート課題を課しました。授業のゲームなのにペナルティを与えることに疑問があるかもしれませんが、ペナルティがなければ、一番高いリスクをとるインセンティブが生じてしまい、生徒全員がハイリスクを取ってしまうと、ゲームとして成立しなくなってしまうからやむを得ないと思っています。

授業の最後に、生徒に各役割を体験して感じたことを振り返りシートに整理させました。多くの生徒はリスクとリターンの関係を正しく理解し、学習内容の定着が見られました。感想としては、「ゲームのように投資が学べて楽しかった」、「実際にやってみて仕組みがよくわかった」など理解が深まったことが伝わってきました。

ワークショップ

参加者には、生徒と同じようにゲームを行っていただき、大いに盛り上がりました。またハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンをどう生徒に教えるか、議論が深まりました。横山先生からは、「これまでいくつかゲームを開発してきましたが、大切なのはゲームがシンプルであることです。準備が大変だと、ゲームで最も重要なトライアンドエラーを繰り返す、ということができなくなってしまう。あとは、おとなしい生徒への配慮です。おとなしいとは、ゲームに勝とうとしない。引き分けでいいという考え方をする生徒です」とゲームを行ううえでの注意点のコメントがありました。

本実践事例は、第14回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2017年)優秀賞作品として当ホームページに掲載されています。

第14回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2017年)

コメント

大杉昭英先生より、次のようなコメントがありました。

永井先生と井上先生の発表でもお話しましたが、ゲームのポイントは二つあります。一つは、最初のお二人の先生の発表は、ゲームをしたあとに概念を教えるものですが、横山先生は最初に概念を教えたあとに、ゲームで納得してもらうというものだったことです。どちらが効果的かは単元によりますが、先生方は、自分の教科マネジメントを考えたうえで、概念を教えてからゲームをするか、ゲームをしてから概念化して学びを深めるか、どちらが効果的なのかを考えていただくとよいと思います。

そしてもう一つは、ゲームはリアリティと、インセンティブのコントロールがないと、うまくいかない可能性が高いということです。学習という観点からすると、どのくらいのマイナスインセンティブが必要かを考えることが必要になります。先生方も、「最下位になったらレポートを出してください」ということになれば、ゲームでの投資額に影響が出てくるはずです。そのあたりがポイントなると思いました。

今回の実践は、事業を継続的に営む株式会社というよりも、「プロジェクト型」に近いものでした。つまり、東インド会社のように、東南アジアに行って胡椒を持ち帰るというプロジェクトを企画する会社にお金を出すといったものであったと思います。横山先生は一回の授業で投資活動を完結させるので、プロジェクト型の投資のイメージで授業を行っていたと思いました。

中学校分科会1の模様②

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