大学生のための 人生とお金の知恵
III. 不確実な人生に船出する
4. お金のトラブルを避ける
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お金に関するトラブルを避けるため、以下のような知恵を身につけましょう。
① ライフプランを立てる
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ライフプランを立てていれば、危うげな話を遠ざけやすくなります。
② 「お金に関して、うまい話はない」と肝に銘じる
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お金に関して、一般に「高いリターンを得ようとすると、リスクも高まる」(ハイリスク・ハイリターン)、「リスクを低く抑えようとすると、リターンも低くなる」(ローリスク・ローリターン)という関係があります。
リスクとリターンの関係 -
金融商品について、安全性・収益性・流動性の全てに優れる商品はありません。「安全・確実で有利な投資」もありません。「お金に関して、うまい話はない」と肝に銘じれば、だまされる可能性は小さくなります。
「安全性」「収益性」「流動性」
③ モノやサービスを購入するときには、お金に見合った価値があるか、よく考える
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迷ったり、少しでも不安を感じたら、周囲の信頼できる人の意見を聞いてみましょう。
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はっきりと断る勇気も必要です。
④ 契約の基本を身につける
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大事な契約は、契約書をよく読むことが大切です。理解できたか自問し、わからない点は質問する、重要な内容は書面にしてもらうといった姿勢が必要です。
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友人に頼まれて借金の保証人になると、友人が払えない場合(自己破産した場合を含む)、代わって支払わなければならなくなります。連帯保証人になると、友人が支払える場合でも、保証人に請求がくれば支払わなければならなくなります。保証人や連帯保証人になるのではなく、相談窓口を教えてあげましょう(→⑧)。
⑧ 困ったときの相談窓口を知る -
インターネットで取引をする場合は、トラブルの事例(情報盗取、不正アクセス、架空請求等)を知り、対策をとること(セキュリティ・ソフトの導入など)が必要です。
⑤ 金融商品は、「信頼できる業者からしか購入しない」と決めておく
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お金は、一生懸命働いて手に入れるものです。そのお金を、怪しげな業者に預けて、なくしてしまうわけにはいきません。「信頼できる業者からしか購入しない」と決めておけば、だまされる可能性は小さくなります。
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どのような業者が信頼できるかは、日頃からしっかり自分の基準を考えておきましょう。業者選びは保守的であるのが一番です。「あなただけに」「あなたのために」などと言ってくる相手も信用できません。相手は自分のために行動しています。真意を見抜くことが大切です。
⑥ 「自分がきちんと理解できる金融商品しか買わない」と決めておく
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そもそも、しくみを理解できない商品を買うのは危険なことです。
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金融商品を選ぶときに、「自分がきちんと理解できる商品しか買わない」と決めておけば、だまされたり、想定外の損失を被る可能性は小さくなります。
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一般に、金融商品は、複雑なものになるほど、手数料が高かったり、“見えないコスト”が含まれていることが多いものです。「きちんと理解できる」簡素な商品を買うことは、お金を運用する際のコストを節約できる効果もあります。
⑦ 情報は、「どのような立場から提供されているか」に注意する
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金融商品を選ぶ場合、選択のために情報を得る必要があります。その際、「どのような立場から提供されている情報か」に留意することが重要です。
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「中立的な立場」から情報提供を行っている組織・団体や、「購入者の立場」に立って情報提供している専門家などから情報を得ることが大切です。
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金融商品を「売る側」の情報は、どうしても「買って欲しい商品」の情報提供に力点が置かれがちです。「売る側」にとっての「買って欲しい商品」は、「買い手」にとっての良い商品ではない場合が多いものです。「売り手側」から情報を得るときは、複数の「売り手」から情報を集め、比較しながら検討するようにしましょう。
⑧ 困ったときの相談窓口を知る
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「消費者ホットライン」=全国共通の電話番号「188」(いやや!)に電話すれば、近くの消費生活センターの相談窓口を案内してくれます。
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消費者ホットライン 188
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金融サービスについては、金融庁の金融サービス利用者相談室もあります。
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0570-016811(IP電話からは03-5251-6811)
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「事前相談(予防的なガイド)」(トラブル発生の未然防止のための相談窓口)は
0570-016812(IP電話からは03-5251-6812)
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法律全般については、日本司法支援センター(法テラス)、日本弁護士連合会などが相談窓口を電話で案内しています。
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法テラス 0570-078374(IP電話からは03-6745-5600)<窓口を紹介>
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日本弁護士連合会 0570-783110 <近くの弁護士会の法律相談センターにつながる>
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警察の相談窓口も知っておきましょう(たとえばヤミ金融の被害、振り込め詐欺など)。
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警察相談専用電話 #9110(全国共通の短縮ダイヤル)
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コラム33大学生が悪質商法の被害者になったり、犯罪に利用されるケース
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世の中には、だまそうとする人が多くいます。
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大学生が、悪質商法などの消費者被害に遭うケースは多くみられます。たとえば、マルチ商法(先輩や友人の紹介で高額な投資用DVDを買うなど)、理美容・アンケート・モニター商法(モデルになるための化粧品、痩身、美顔、脱毛など)、就活商法(セミナーなど)、サクラ・出会い系サイト(有名人に会える、悩みを聞くバイトなど)、アダルトサイト(架空請求など)、デート商法、ブランド品詐欺などです。
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人をだます際に、大学生を利用する人もいます。たとえば特殊詐欺を企てる人が、振込用の銀行口座の開設や入手を大学生に依頼するケース、だました人から現金を受け取る役割を大学生に依頼するケースなどがあります。多くの場合、かなりの報酬が支払われます。
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協力するのは犯罪です。協力者がいることで特殊詐欺などの被害が拡大している面があります。報酬につられて安易な気持ちで協力すると、人生を誤ります。
コラム34特殊詐欺の手口
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特殊詐欺の手口は増え続け、10類型になりました(2020年からの分類)。
1 | オレオレ詐欺 | 親族等を名乗り、「鞄を忘れた。小切手が入っていた。お金が必要だ」などと言って、現金をだまし取る(脅し取る) |
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2 | 預貯金詐欺 | 警察官、銀行協会職員等を名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続きが必要です」と言ったり、役所の職員等を名乗り、「医療費などの過払い金があります。こちらで手続きをするのでカードを取りに行きます」などと言って、暗証番号を聞き出しキャッシュカード等をだまし取る(脅し取る) |
3 | 架空料金請求詐欺 | 有料サイトや消費料金等について、「未払いの料金があります。今日中に支払わなければ裁判になります」などメールやハガキ(封書)で知らせ、金銭をだまし取る(脅し取る) |
4 | 還付金詐欺 | 医療費、税金、保険料等について、「還付金があるので手続きしてください」などと言って、被害者にATMを操作させ、被害者の口座から犯人の口座に送金させる |
5 | 融資保証金詐欺 | 実際には融資しないのに、簡単に融資が受けられると信じ込ませ、融資を申し込んできた人に対し、「保証金が必要です」などと言って金銭等をだまし取る(脅し取る) |
6 | 金融商品詐欺 | 価値が全くない未公開株や高価な物品等について嘘の情報を教えて、購入すればもうかると信じ込ませ、その購入代金として金銭等をだまし取る(脅し取る) |
7 | ギャンブル詐欺 | 「パチンコ打ち子募集」等と雑誌に掲載したり、メールを送りつける。会員登録等を申し込んできた人から、登録料や情報料として金銭等をだまし取る(脅し取る) |
8 | 交際あっせん詐欺 | 「女性紹介」等と雑誌に掲載したり、メールを送りつける。女性の紹介を申し込んできた人から、会員登録料金や保証金として金銭等をだまし取る(脅し取る) |
9 | その他の特殊詐欺 | 上記の類型に該当しないもの |
10 | キャッシュカード詐欺盗(窃盗) | 警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を名乗り、「キャッシュカードが不正に利用されているので使えないようにする」などと言って、隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る |
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まず、自分自身がだまされないように気をつけましょう。また、周囲の人(高齢者の方など)がだまされないよう気を配りましょう。もし報酬(「高額」「即日現金」の「バイト」「裏バイト」など)につられて特殊詐欺に協力してしまうと犯罪を犯すことになります。