大学生のための 人生とお金の知恵
II. お金の知恵
1. お金の特徴
1) お金の機能(役割)
-
現在のお金は、お金そのものに価値があるわけではありません。昔のお金は、金や銀でできていたり、金や銀と交換できる紙幣(兌換紙幣)でした。しかし、現在のお金、たとえば「1万円札」は、金や銀とは交換できず、物質的には紙です。それでも「1万円札」が「1万円」として通用するのは、人々の“信頼”があるからです脚注8。
-
お金の機能は3つです。
-
支払・交換手段・・・お金はモノやサービスの購入の支払にあて、これらと交換できる
-
価値尺度・・・お金はモノやサービスの価値を判断する尺度(物差し)になる
-
価値保存(貯蔵)・・・お金は価値を貯め、保存しておくことができる
-
「お金」の価値と、「モノやサービスの価格」(物価)は、表裏一体の関係です。物価が下がっている状態をデフレ、上がっている状態をインフレと呼びます。見方を変えれば、「物価が下がっていること(デフレ)は、お金の価値(モノやサービスを買う力=購買力)が上がっていること」、「物価が上がっていること(インフレ)は、お金の価値が下がっていること」です。
-
外国為替相場(円と他国通貨との交換価格)についても、同様の見方をすることができます。円とドルを例にとると、たとえば「1ドル=100円」から「1ドル=80円」になることを「円高」脚注9(ドル安)と呼び、「1ドル=120円」になることを「円安」(ドル高)と呼びます。円高はお金(円)の価値を増大させます。円安はお金(円)の価値を減少させます。
-
たとえば、円安になると、輸入品(食料など)の価格が上昇したり、海外旅行の費用が高くなります。これは、円の価値(購買力)が低下したことを意味します。また、円で持っている資産(たとえば円での「預金」)の価値も、円安になると減少します。
-
2) 金利
金利
-
お金を預けると、利子(金利)を得ることができます。一方、お金を借りると、利子(金利)を払わなければなりません。
-
金利は、「お金の貸し借りの価格」です
-
モノやサービスの価格は、一般に、「需要>供給」の場合(買いたい人が多いとき)は上昇し、「需要<供給」の場合(売りたい人が多いとき)は低下します(「需要と供給の法則」)。
-
お金の貸し借りの価格である金利も、「需要>供給」の場合(借りたい人が多いとき)は上昇し、「需要<供給」の場合(貸したい人が多いとき)は低下します。たとえば、景気が良く、企業が設備投資をしたり、商品の仕入れを増やしたりするために「お金を借りたい」との需要が大きくなると、金利は上昇します。
複利
-
複利とは、「利子にもまた利子がつく」ということです
-
たとえば、100万円を年利3%で運用した場合、1年後には103万円になります。では、この103万円をそのままもう1年、年利3%で運用した場合、いくらになるでしょうか。
-
答えは、106万円ではなく、106万900円です。1年目についた利子3万円にも利子がつき、これが900円になるためです。
-
複利の効果は、金利が高いほど、期間が長いほど、大きくなります。下のグラフが直線ではなく、上に反る形で上昇していくのは、複利(利子にもまた利子がつくこと)のためです。
-
人類の歴史上最高の物理学者とも評されるアインシュタインは、「人類の最大の発見は、複利である」と語ったといわれます。「複利の力」の大きさを表現したものです。お金を運用する場合も、借りる場合も、「複利の力」を意識しましょう。
3) お金のふえ方
72の法則
-
お金のふえ方についての感覚を身につけるうえで、「72の法則」が役立ちます。お金が2倍になる年数がすぐにわかる便利な算式です。
-
「72の法則」
72 ÷ 金利 ≒ お金が2倍になる年数
72 ÷ 年数 ≒ お金が2倍になる金利
-
「72÷金利」を計算すると、お金が2倍になる年数が出ます(概算です)。たとえば、金利3%でお金を運用した場合、72÷3=24ですので、24年で2倍になることがわかります。同様に、金利が4%、6%の場合は、18年、12年と算出できます。
-
「72÷年数」を計算すると、お金が2倍になる金利が出ます(概算です)。たとえば、お金を運用して20年で2倍にしたい場合、72÷20=3.6ですので、年利3.6%で運用する必要があることがわかります。
-
お金を借りるときも、この式を使えば、返済負担の大きさがよく理解できます。たとえば金利18%でお金を借りると、72÷18=4ですので、借りたお金は約4年で2倍になることがわかります(コラム17参照)。
コラム17「72の法則」の活用 -
「72の法則」で使われる「金利」は複利です(1年ごとに利子にも利子がつくと想定)。このためこの式は、「複利の力」を理解し、金利の感覚を身につけるうえでも役立ちます。
お金を運用するとき、借りるとき、「複利の力」を意識しましょう!
「72の法則」を使いましょう!
-
お金が2倍になる年数がすぐわかります。
-
「72÷金利」を計算すれば、元のお金が2倍になる年数が出てきます(概算です)。
-
72÷金利 ≒ お金が2倍になる年数
*ここでの「金利」は複利です(1年ごとに利子にも利子がつくと想定)
脚注
- 8
-
ここでの、“信頼”とは、「他の人も、これを『1万円』として受け取ってくれるであろう」「今後も『1万円』としての価値を持つであろう」との見方のことです。なお、お札には法的な強制通用力がありますが、“信頼”がなくなると(「偽造券でないか心配だ」「高インフレで価値がすぐ減少してしまう」など)、人々はお札の受け取りを事実上避けようとします。これまでそのようになった例は、世界の各地に見られます。
- 9
-
「1ドル」を手に入れる(買う)のに100円かかる場合と、80円で済む場合とを比べると、80円で済む場合の方が円の価値が高く「円高」です。