先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
D キャリア教育に関する分野
高等学校
「高校生と十万円」
(1年 公民科)
市立札幌清田高等学校 藤倉 水緑 教諭
2020年10月に1年次の公民科・倫理で単元名を「高校生と十万円」として行った金融教育公開授業をご紹介します。コロナ禍で入学し、5月末まで休校を余儀なくされた生徒に対して、主体的に課題を見いだし、課題の解決に向けて友だちと協力しながら、自らの考えを表現できるようになってほしいと考えて実践しました。
1時間目の主題は「コロナ禍と私たちの生活、そして課題」です。コロナ禍での日本の課題と自分の課題を考えさせ、クラスで共有したところ、予想以上に多くの具体的な課題が挙がりました。また、特別定額給付金について、賛成・反対を考えさせました。この段階では、多くの生徒が特別定額給付金に賛成でした。
2時間目以降は、友だちと課題の解決方法を考える活動です。1時間目で挙がった課題を、政治、経済、医療、その他と四つのカテゴリに分け、その中から興味があるものを選び、ペアを決めました。3時間目は、課題に関してタブレットで調べ学習を行い、その後はタブレットを使わず解決方法を考える活動を行って、特別定額給付金の賛否についても改めて考えさせました。4時間目にペアごとにプレゼンの練習を行い、5時間目にプレゼンと代表ペアの選出、6時間目には代表ペアによる最終プレゼンを行いました。
代表に選出されたペアの一組は、「感染者とその家族への差別」を課題とし、家や個人を特定されて石を投げられたり、落書きをされたりするなど実際にあった差別を調べました。構想した解決方法は、「相手と自分の違いを理解する」、「政府やマスメディアが正しい情報を提供する」、「冷静に正しい情報を選択する」でした。また、特別定額給付金については、「差別や偏見はお金では解決できない。給付金だけでは悩みを抱える人を救うことはできない」と発表しました。一連のプレゼンを経て、再び特別定額給付金について生徒に賛否を聞いたところ、1時間目には多くの生徒が賛成でしたが、6時間目には反対と考える生徒が半数以上を占めました。
この実践を通して、生徒が他者と協働しながら主体的に考え、表現することができたことに加え、実践を終えた現在も課題解決に対する意識を高く持って日常生活を送っていることが大きな成果であると思います。今後は、論拠を持って質問する力がより育つよう、学習活動を工夫したいと考えています。