先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
B 金融や経済の仕組みに関する分野
高等学校
「私たちの消費生活」
(3年 社会科)
長崎県長崎市立香焼中学校 浦川 寿生 講師
2020年9月に長崎市立江平中学校(2021年3月閉校)において、「私たちの消費生活」と題してキャッシュレス決済をテーマに金融教育公開授業を行いました。自立した消費者として行動するための基礎知識と態度を身に付けることが、本授業のねらいです。
まず、世界各国のキャッシュレス決済の利用比率のグラフを示し、日本のキャッシュレス決済の利用比率が諸外国と比べてかなり低い現状を伝え、日本のキャッシュレス決済で最も利用されているクレジットカードの仕組みや正しい使い方を学びました。そして、「ある日突然、クレジットカードが使えなくなった」という事例についてグループ討議を行い、各グループの意見を全体で共有した後、ゲストティーチャーに講評していただきました。ゲストティーチャーからは「クレジットには、『信用』という意味がある。カード会社はあなたからの返済を『信用』し、お金を『立て替えている』。クレジットカードでの買い物は借金である」といった説明のほか、リボルビング払いについても補足説明がありました。
さらに、高校生による他人名義のクレジットカードの不正使用のニュースを取り上げ、カードを使う際に気を付けるべきことなどを学びました。生徒からは「商品の取引には消費者側にも責任があることがわかった」、「クレジットカードを使用する際には正しい知識と計画性が必要」といった感想が発表されました。
この授業で工夫した点は四つあります。一つ目は、グループ討議で扱った事例です。実際にあったトラブルを取り上げることで、生徒が少し怖いと感じる場面をつくることにしました。二つ目は、金融に精通したゲストティーチャーを招くことです。そのゲストティーチャー(金融広報委員会のアドバイザー)から事例に対しての解説や困ったときの対処法を具体的に示していただくことで、生徒の深い理解につながりました。三つ目はキャリア教育とのつながりを意識したこと、四つ目は「わかる授業」の実践です。特別支援教育の観点から、「めあて」と授業の流れの明示、資料の視覚的指示や見やすい板書など、ユニバーサルデザイン化に努め、授業の後半ではまとめや振り返りから学習内容を深めました。
授業後のワークシートの感想では「消費者として自覚ある行動をとっていきたい」、「この授業で学んだことを活かして消費者トラブルに巻き込まれないようにしたい」といった声が聞かれました。また、「経済について興味を持った。大学で経済を学びたい」と書いた生徒もおり、この授業を行った意義を感じることができました。