先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
A 生活設計・家計管理に関する分野
高等学校
「株式投資にチャレンジ」
(3年 政治・経済)
千葉県教育庁教育振興部 萩原 拓也 氏
千葉県立泉高等学校で3年生を対象に行った政治・経済の授業実践をご紹介します。本校では、卒業後、進学する生徒と就職する生徒の割合が1対1で、すぐに社会に出る生徒も多くいます。そこで本実践における目標を「自立した社会人として期待される、金融に関する知識を身につける」、「金融について多面的・多角的に考える」、「金融に関わる意思決定を通じた、自律した意思決定能力を涵養する」の三つとしました。
一つ目の実践は貿易ゲームです。貿易ゲーム自体は、国際経済を学習する教材としては目新しいものではありませんが、示唆に富んだ活動であり、今回の目的につながる教訓を引き出すことができます。授業者は展開を見つつ、必要に応じて貿易の条件や環境をコントロールします。貿易ゲームは、市場における政府の役割、GDPと平均所得、経済格差といった気づきを与えてくれます。特に金融教育の観点からは、製品の取引価格に差をつけることで、国際貿易における為替相場の変動を意識させるよう工夫しました。
もう一つの実践は、経済ニュースと株価の短期的な動きに関するクイズ形式の授業です。実際の経済ニュースを見せて「この記事の翌日から数日間に株価が4倍に値上がりした会社がある。それは次のうちどれか」と生徒に考えさせました。授業のテーマに株を選んだ理由はいくつかあります。長期的な視点での理由としては、低金利が続く一方で、NISAやiDeCoといった仕組みが整備されつつある中、自分の資産をどう管理すべきか考える機会を生徒に提供したかったためです。短期的な視点での理由は、必ずしも合理的ではない株式市場の動きを、実感を持って感じる機会を提供したかったからです。また、トレーディングカードゲームやネットオークションが身近な生徒にとって、株というテーマは意外に理解しやすいのではないかと考えました。同時に、投機的な売買をすることの怖さについても、卒業前にきちんと扱っておかなければならないと考えました。
これらの実践では、公共の学習指導要領も意識しました。まず概念を獲得し、その概念を用いて問題を解決する、さらに生徒自らが問題設定できるようになることを目指した授業構成としています。この部分は、地域や学校の実態に応じて計画、実施されていく部分だと思います。