先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
D キャリア教育に関する分野
中学校
「『起業体験学習』加納inフェスタをみんなの手で成功させよう!!」
(3年 社会科、技術・家庭科)
宮崎県宮崎市立加納中学校 井上直樹 教諭
宮崎県宮崎市立宮崎中学校 永井和代 教諭
本校の3年生の社会科、技術・家庭科で行った「『加納inフェスタ』をみんなの手で成功させよう」という起業体験学習をご紹介します。「加納inフェスタ」は、加納小学校のバザーが始まりで、小・中学校のPTAとまちづくり協議会が参加するようになり、現在に至ります。
この学習における、技術・家庭科の視点は、「これまで学習したことを生かし、消費者に買ってもらえる商品を作ることができる」です。社会科の視点は、「身近な事例をもとに、消費や労働、生産と金融の仕組みや働きについて理解するとともに、市場経済の基本的な考え方を身につけ、その考えを活用して経済的事象を捉えることができる」、「生産者と消費者の関係について多面的、多角的に考察できる」です。社会科と技術・家庭科の両教科の視点は、「起業体験を通して、企画、準備、運営などに見通しを持って取り組むことができる」、「商品の選択や購入の方法を工夫できる」です。
まずは、「加納inフェスタ」の模擬店を成功させるために、班ごとに企画書を作成し、発表を経て、投票で企画を二つに絞り込みました。その企画に基づいて、模擬店会社を作り、社長を決め、その後は、社長を中心に必要な用具や材料の確認、作業の洗い出し、役割分担などを決めていきます。
次に、資金の準備です。食材の購入資金を学校のPTAから融資をしてもらおうと考え、PTA会長と会計の方に来ていただき、事業企画書を説明しました。その結果、無事に融資をしてもらうことができました。ここまでが、社会科と技術・家庭科のクロスカリキュラムで行った内容です。
この後、総合的な学習の時間を使って、看板や試作品の作成を行い、いよいよ「加納inフェスタ」当日を迎えました。お客さんを引き付けるため、販売場所を変えたり、売り歩く作戦に変えたり、どの会社も営業活動に工夫を凝らしていました。フェスタ終了後は、社会科の視点から振り返りを行い、当日の売り上げ推移とそのときの行動、状況を分析して、他のクラスと比較しました。
この体験を通して、生徒は、金融や経済を身近に感じることができただけでなく、生産者や消費者としての責任を、緊張感を持って学習することができました。また、予算に見合う商品の作成や販売方法の工夫、付加価値について考え判断できるようになりました。この活動を、賃金や税金、労働者の権利などの学習まで深めることが今後の課題です。また、現実社会では、利益を出すことが簡単ではないことを理解させるための工夫ができれば、さらに学習が深まると考えています。