先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
A 生活設計・家計管理に関する分野
高等学校
「制服の一生すごろく」
(1年 家庭基礎)
三重県立松阪高等学校 岡 恵美子 教諭
本校では、生活体験がまだ少なく実生活に関連した知識や技能が十分でない高校生が興味・関心を持って家庭科を学ぶことができるよう、年間を通じてすべての学習分野でSDGsや金融教育の視点を取り入れています。今回はSDGsを踏まえた被服分野の消費者教育の実践を二つご紹介します。
一つ目は、服育ネット研究所のツール「制服の一生すごろく」を利用した実践です。制服を「つくる」、「着る」、「捨てた後」という過程とその環境負荷について、楽しみながら学べるツールです。温暖化の原因とされているCO2の排出量を「見える化」していることが特徴です。一般的なすごろくのように、最初にあがった人が勝つのではなく、最後にあがった人、つまり長く制服を活用した人が勝つというところにも面白さと気づきがあります。
すごろくを楽しみながらの学びはとても盛り上がり、グループワークでも活発な意見交換が見られました。このすごろくによって、生徒は制服を作る際に多くのCO2が排出されていることに気づき、「制服を長く大切に着たい」という感想だけでなく、「CO2を抑えた製造・保管・廃棄方法や繊維・布地の研究開発をしたい」といった将来を意識した感想も聞かれました。
また、「制服標語ポスターコンクール」への応募にも取り組みました。この過程でも生徒同士で様々な意見交換をし、作品を発表し合うなど、楽しんで取り組んでいました。さらに、ICTを活用した小テストを実施し、被服分野で学んだ知識の定着を図りました。こうした様々な形態の言語活動で、思考力・判断力・表現力の育成を促すことができました。
二つ目は、制服の残反を利用した被服実習です。制服を扱う企業から制服の残反を提供していただき、その残反で巾着袋を製作しました。この実習で、基本的な実技・技能の習得だけでなく、作品が完成したときの達成感も得ることができます。自分で作ってみることで完成までの苦労に触れ、製作者への尊敬の念と感謝の心が育まれます。
賃金を得て家庭生活を営むという経験をまだしていない生徒にとって、金融教育は豊かで幸せな未来へ繋がるとても重要な学びです。家庭科では多くの学習内容が金融教育に応用でき、様々な実践が可能です。生徒が豊かな未来の担い手となって幸せに過ごすことができるような教育実践を、これからも心がけていきたいと思っています。