先生のための金融教育セミナー
2021年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
D キャリア教育に関する分野
小学校
「地域や企業と連携して行う会社体験活動」
(5年 総合的な学習の時間)
東京都杉並区天沼小学校 新宅 直人 指導教諭
本校の天沼会社経営プロジェクトをご紹介します。毎年5年生が取り組んできた教育活動で、地元の商店街や企業の協力の下で行っています。子どもたちが株式会社を設立し、商品を開発、製造、販売して利益を得るという起業体験活動です。
4月に、会社を作ることや商品を開発して販売することについて、子どもたちに1年間の見通しを持たせました。そして、物を作って売るとはどういうことかを学ぶため、学校の近くの和菓子屋さんを招き、商品の価格設定や売るための工夫について教えていただきました。
次に、販売する商品のアイデアを出し合い、グループでプレゼンテーションを作り、品評会で発表しました。品評会の審査員は地域の方々です。審査員からは、「大量生産できるの?」、「こういう商品はもうお店に売っているよね」といった厳しい質問や意見も出ます。子どもたちは、こうした意見を聞くことで、自分たちのアイデアに足りなかった点に気づくことができました。この年は、第1回品評会の結果から、商品化するアイデアが「食器」、「芳香剤」、「入浴剤」の三つに絞られ、商品化するにあたり、市場調査を行いました。
2学期には、市場調査で得られたデータをもとに各グループで試作品を作って、第2回の品評会を行いました。ここで商品アイデアが絞られ、製造販売する商品が「芳香剤」に決定しました。
次に、会社の組織作りに入ります。地元企業の方に、会社とはどういうものか、会社で働くうえで何が大事かを伺いました。その後、自分たちの会社の社長、商品開発部長、製造部長、宣伝部長などを決めました。その頃からは、教員が口を出すことが減り、社長を中心に子どもたちが主体的に物事を決めていくようになります。出来上がった商品は、学校の近くの8ヶ所に販売所を設置し、販売しました。得た利益の使い道は、子どもたちが話し合って決定します。この年は図書室に新しい本を30冊ほど寄贈することなどが決まりました。
この活動で大事にしていることは、できるだけ子どもたちに本物に触れさせること、教員が手を出しすぎないことです。小学校段階で子どもたちに本格的な会社活動を体験させられることが、この活動の大きなメリットです。一方で、中学校での学びにどのように繋げていくかという点については、今後も検討の余地があると考えています。