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2017年度 先生のための金融教育セミナー

【高等学校・大学向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会3

進行・コメント:
富山県立新湊高等学校 谷内 祥訓 校長
実践発表およびワークショップ(1)

「金融をとりまくパーソナルファイナンス 〜お金を借りる、将来に備えるについて考える〜」(3年 商業)
宮城県宮城広瀬高等学校 佐藤 静江 教諭

実践発表

宮城広瀬高等学校は、平成27年度、28年度の2年間、金融教育研究校の委嘱を受けました。「金融を取り巻く現状を理解し、経済主体の一員として、自ら考え行動できる生徒の育成」を研究テーマとし、公民科、家庭科、商業科などの各教科が連携し、教科横断的な取り組みを推進することで効果的な指導方法を探ることを目指して、取り組んできました。

平成27年度は、公民科では政治・経済において、経済システム、財政、景気変動などを中心に、全体的な経済の関わりや金融の仕組みについて取り上げました。

家庭科では家庭基礎において、消費者として自立することを踏まえ、必要な知識とルールを話し合いながら学習しました。更に悪質商法のビデオを視聴し、その対策を自らワークシートに書き込むことで、被害に遭わないように日頃の心がけが必要であることを理解させました。

商業科では、ビジネス基礎において、ファイナンシャルプランナーによる出前授業を通して人生には実際どれだけのお金が必要なのかを学習しました。また、物やお金には限りがあり、限られた予算の中でより良い生活を過ごすために決められた給料を振り分けるグループ学習も行い、生徒は家計のやりくりの大変さを通してお金の大切さについて深く考えるようになりました。

こうした中、今後の指導に向けて生徒の実態を把握するため、全校生徒に様々な調査を実施し金融広報中央委員会の「子どものくらしとお金に関する調査」の全国調査結果と比較分析しました。この結果からは、経済や金融関係に関する知識に関しては当校の生徒は全国結果を下回っていることが分かり、知識の定着率向上に向けて指導しながら、全国と比べ弱い分野を各教科で重点的に取り組むことにしました。

このような背景から、平成28年度は実務的な教材で授業に臨み、前年度からの改善や発展的なものを構築しつつ、各教科の進捗状況を確認しながら進めることにしました。

公民科では、前年度の取組みを展開し体験型教材を活用しながら、ゆるキャラの経済効果など現在に即した経済の動きが感じられるようにテーマを設定しました。

家庭科では、前年度の学習を深めるとともに消費者教育教材「ライフサイクルゲーム」を体験することで、人生には年代ごとにイベントがあり様々な出費やリスクがあることに気付かせました。

商業科では、景気の変動と物価、金利などの関係を理解したうえで、お金の価値の安定が私たちの生活に必要であることを確認しました。また、出前授業を通して、お金を借りた際の利息計算や金利と複利の仕組みの違いを理解させたほか、タイムリーな話題としてマイナス金利についても触れました。更にお金や金融の様々な働きを理解し、より豊かな生活やより良い社会づくりに向けて主体的に行動することを目的に、地元金融機関の協力の下、銀行体験研修も実施しました。

生徒はこうした金融教育を通して、金融のシステムを理解し賢い消費行動をとることが出来るような力が身についてきたものと考えていますが、やはり自分自身の問題として把握することは難しいようです。限られた時間数の中で授業を進めるにあたり、身近な事柄を取り上げる工夫をしながら、効果的で効率的な授業展開に向けた他教科・科目との連携を一層深める必要があると考えました。今後は、知識だけでなく社会に出て役立つ教育、言語活動や意思決定のためのアクティブラーニング、合理的な意思決定の3点を課題として、教科の枠を越えた様々な試みを続けていきたいと思っています。

ワークショップ

今回は、二つの体験をしていただきました。一つ目は「利息計算」です。お金を借りたら利息をつけて返すということを生徒が実感できるように、授業では実際に電卓を使って計算しているため、先生たちにも同様に計算していただきました。生徒たちの利息の大きさへの驚きや、支払い方法によって返済額が変わることへの反応も佐藤先生から説明がありました。二つ目は家庭科で実践した「ライフサイクルゲーム」をグループに分けて体験して頂きました。人生に起こりうる様々な出来事に、どのようなことに気をつけ備えなければならないかを考えながら、先生方も楽しんで体験されていました。佐藤先生からは、「ライフサイクルゲーム」のように、身近に授業で使える教材は色々とあり、それらを活用することも効果的であるとのコメントがありました。

コメント

谷内祥訓先生より、次のようなコメントがありました。

ワークショップは、ゲーム形式で子どもたちに感覚的にお金に対するイメージを湧かせる取り組みだったと思います。また、同じ学校内で教科横断的に金融教育を行う試みが大変素晴らしいと感じました。

お金というのは社会全体を円滑に回す拠り所である点で大事なものだということを、まず子どもたちに教えるべきだと思います。そのお金の価値を踏まえて、お金にはどんな使い方があるのかといった基本的なことを子どもたちに伝えていく。そうすれば、子どもたちのお金に対する認識も、お金は大事なものだからしっかりと使うという具合に繋がっていく。それが金融教育の目指す「生きる力」のかん養につながると思います。

また、さきほど「アクティブ・ラーニング」というお言葉がありましたが、金融教育には身の回りに様々な具体的事例があります。それらをうまく教材としてつなげ、生徒に気づかせることで、生きた金融教育ができると考えます。

さらに、公民科、商業科、家庭科など、教科間で連携しながら、金融教育の4つの分野にアプローチしていけば、子どもたちに金融の大枠をしっかりと理解させたうえで、お金を通した世の中の動きをイメージさせることができると思います。

高等学校分科会3の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「『東海市まちづくり応援大使』〜知的財産権を活用した金融教育」(3年 商業)
愛知県立東海商業高等学校 黒瀬 喜人 教諭

実践発表

東海商業高校は、愛知県名古屋市の南側に位置する東海市にあり、愛知県では一番大きな商業高校です。今回ご紹介する実践事例は、平成18年度、地元「太田川駅前周辺まちづくり事業」に商業科3年生の「課題研究」の講座で参加する機会を得たことに始まります。

市街地再開発事業をテーマに高校生の視点から様々な提案や取り組みを行う中、生徒から「オリジナルキャラクターを作ってみては」という声が挙がり、平成19年度に、東海市の産業や特産品をモチーフに生徒がデザインした4つのキャラクターが誕生しました。市からの広報誌やパンフレットへの掲載要望によりイラストレーターの手によって今のデザインに仕上げていただき、平成24年に「東海市まちづくり応援大使」と命名され、広く活用していくことになりました。

こうした中、生徒からの「着ぐるみを作りたい」という声を受け、平成25年度にキャクターのリーダー的存在である「オニオンマン」の着ぐるみを作製しました。これは、生徒がみつけてきた地元の信用金庫が募集している地域振興支援制度「夢サポート」という企画に応募し第3位に入賞したことに伴い、信用金庫から支援していただいた50万円を基に実現しました。架空ではない現実の50万円をどのように運用するかを考えさせたことで、生徒たちはいきいきと目を輝かせて取り組んでいました。その後、着ぐるみは、色々なイベントからオファーを受けるまでになりました。

そして、5つ目のキャラクターが誕生します。平成25年の「商品開発」の課題研究講座を選択した生徒11名が、東海市創業企業の「カゴメ株式会社」をイメージして、トマトをモチーフにした「とまてぃーぬ」というキャクターを考案しました。

カゴメとキャラクターの活用方法について相談していた折しも、市長の強い要請もあり、市民の健康づくりと地域の活性化を目的に、東海市とカゴメが「トマトde健康まちづくり協定」を締結しました。市長より「特命トマト係長」を拝命し、「とまてぃーぬ」は一応、公務員となっています。

その後は、地元の有名なパン屋などとのコラボで、いくつも商品化に取り組んだり、地元の地域商品券の肖像や、カーナビに表示されるキャラクターにも採用されました。

こうしてイベントや商品開発で活躍する「とまてぃーぬ」の権利を守るために、商業科1年生「ビジネス基礎」で履修した「知的財産権」を思い出し、「とまてぃーぬ」の商標権取得に動きました。「商標権とは」をテーマに弁理士による講義を受けたり、「とまてぃーぬ」が既に登録されていないかを調べ、商標の願書の記入について学びました。そして平成27年に姿かたちを保護する立体商標と文字商標を取得し、10年間権利が保護されることになりました。

さらに、生徒たちは、着ぐるみを有料で貸し出したと仮定して経済効果を試算したり、復興支援などのイベントを通して義援活動を行ったりしています。このように積極的な地域貢献活動を通して、生徒たちが様々なことを実際に体験出来ているのが良かったと思っております。これからも益々地元が盛り上がっていくような活動を進めていきたいと考えています。

ワークショップ

ワークショップでは、各グループにおいて地元の名産、特産、歴史的なものなど色々なアイディアを出し合い、まちづくりを応援するキャラクターを作るといった取り組みを模擬体験していただきました。各チームからは、地元の祭りのほか、農産物や地元グルメなどを活かしたキャラクターのアイディアが発表されました。黒瀬先生からは、「今回は短い時間でお願いすることとなってしまい大変だったと思いますが、生徒がいろいろなアイディアを出し、キャラクターを描き、名前も考えるなど、生徒の想像力、発想力はすごいなと自分も改めて感じました」との感想が伺われました。

コメント

谷内祥訓先生より、次のようなコメントがありました。

黒瀬先生の実践報告では、50万円という限られたお金をどう活用するかということを生徒が話し合い、生徒が主体的に着ぐるみに活用したということです。そして着ぐるみを活用した経済効果の測定や知的財産権の学習へと学習内容を深めていき、さらには団体としての資金管理の重要性を実感できたことも良かったと思います。「起業家精神」という言葉がありますが、現状を的確に分析して新しいことにチャレンジする力を生徒に持たせること、すなわち、分析力と実行力を伸ばしていくことは大事です。

また、こうした活動とキャリア教育はとても関連していると思いました。実践的に活動し収益を上げることなど、身をもって学習することでお金の存在価値を理解することは、キャリア教育として重要です。黒瀬先生は、遊びの要素を取り入れながら、非常に奥の深いテーマに取り組まれたと思います。

高等学校分科会3の模様②

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