第46回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
第一分科会講義(要旨)「これからのライフプランについて」
これから増える負担とは
今後の日本がどう変わっていくのか。その中でどんな暮らしをしていけばより幸せになるか、ご一緒に考えていきたいと思います。
年金改革、税制の改正などで年金や医療保険、介護保険、雇用保険の保険料がそれぞれ増えて、手取り収入が減っていきます。
具体的にどんな感じかを説明しましょう。
年収570万円の専業主婦世帯で高校生の子どもが二人の場合、現在は所得税、住民税、社会保険料合わせて年間負担は77万6633円、手取り年収は492万3367円です。負担増が実現すると、来年度の負担合計は87万579円となり、およそ10万円近い負担増です。共働き世帯は、もともと配偶者特別控除の恩恵を受けていないので、保険料の負担増だけですみます。
高齢者夫婦で年金240万円の場合、老年者控除がなくなるなどしますので、所得税、住民税が発生し、税負担はなんと5万4188円もアップします。年金暮らしのご家庭は、年金だけで生活するのは大変で貯蓄を取り崩しているケースが多いと思われます。どうして負担ばかりというお腹立ちもあるかと思います。
老後の大きな不安に対処する
60歳で退職し、80歳まで生きるとすると、老後には10万2200時間という長い自由時間が待っています。ここの時間を自分でどうデザインするかで、その後の人生が大きく違ってきます。
その際の大きな三つの不安を考えたいと思います。
まず年金です。生命保険文化センターが、老後の生活費のアンケートをとった結果、平均で最低限の生活費は月々23万5000円、ゆとりのある生活には37万3000円欲しいと答えています。
現行の制度でも、今50代の人で在職中の平均給与が35万円とした場合に、40年間加入していると年金額は約200万円。妻が専業主婦の場合に60万から70万円ぐらいの年金がついたとして、最低限の生活費すら捻出できるかどうかわかりません。
老齢厚生年金の支給開始年齢が徐々に遅れて、男性では昭和36年、女性では昭和41年4月2日生まれ以降の人たちからは65歳まで1円も年金が出ないことになります。雇用を65歳まで延長しようという動きが出ていますが、新たな年金改革が実現すれば年金の支給額はますます減っていきますので、その分、今の若い方たちは準備をしておかなければなりません。
次に医療です。負担がどれぐらいのスピードで増えているか。昭和58年の1月までは高齢者の医療は福祉でまかなわれていたので無料でしたが、昭和58年の2月から一定額を負担するようになりました。平成14年10月からは定率負担を完全実施。一般的には1割ですが、高額所得者は2割負担です。今後高齢化がハイスピードで進むと、高額所得者でなくても2割負担、あるいは現役同様3割負担にだってなるかもしれません。
そこで考えないといけないのは保険、特に医療保険の見直しです。平均寿命の80歳ぐらいまで、できれば一生涯保障してくれるものに加入するか、貯蓄の中から300万円ぐらいを、いざという時のお金と決めて、とっておく必要があるということです。
でも医療保険には、ある一定の金額を超えると超えた分が返ってくる高額療養費制度があります。これは自分で請求しないともらえませんので、ぜひ覚えておいてください。この自己負担限度額も知らないうちに上がっているので注意したいですね。
次に介護です。介護保険制度は2000年の導入ですが、すでにその財政が悪化し始めています。要介護期間が長くなったらどうするか、また保険料の地域格差やアップ率も問題となっています。介護保険や医療保険は市区町村が担当していますので、住んでいる地域によって、かなり保険料が違っています。月6000円近いところもあれば2000円以下のところもあります。約6000円の地域は前回の保険料の見直しで64.7%もアップしたのです。このように介護は、今後急激に大きな問題になっていくでしょう。