第45回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
全体会講義(要旨)「不良債権と私たちの暮らし」
不良債権の実態
不良債権とは一体何だろうということからお話しします。
不良債権の1番わかりやすい定義は、企業が銀行等から借りたお金を、当初の条件通りに返済できなくなった時、その貸出金を不良債権といいます。この不良債権がかつてないほど深刻になっています。
全国銀行ベースでみた場合の不良債権の残高は、昨年の3月末で42兆円です。さらに、信用金庫、信用組合まで含めますと53兆円に達します。
今、日本の国家予算が大体年間80兆円です。年間予算の7割くらいの不良債権を、日本の金融機関は抱えているということです。これを国民1人あたりにすると大体44万円です。
銀行の資産の中で何%くらいが不良債権になっているかという不良債権比率でみますと、1998年3月末は6%でした。それが2002年の3月末に9.4%となっています。
銀行や金融機関が不良債権問題で苦境に陥ったのは、今回の日本が初めてではありません。典型的に起きたのはアメリカでした。1991年末に、アメリカの銀行の不良債権問題が1番大変だった時の不良債権比率が3.8%です。今の日本は、アメリカに比べて2倍以上の水準になっています。つまり、未曾有の危機に日本の金融機関はおかれているのです。
不良債権と自己資本
不良債権は、経済や私たちの暮らしにどういう影響を与えるのでしょう。不良債権が増加すると、自己資本を削って処理しなければなりません。これが銀行等のバランスシートが悪化するということです。こうしたリスクがあると、貸出が慎重化します。これが、銀行が新しい貸出をなかなかしなくなる、いわゆる貸し渋りといわれるものです。
このように自己資本は、銀行にとって非常に重要な役割を果たしています。銀行の経営を見るには自己資本の比率が重要です。
金融当局はそこに着目して、自己資本比率規制を設けて満たすべき基準を定めています。国際基準行は自己資本比率を8%以上に保つことが必要です。国内基準行はその半分の4%を求められます。仮にこの数字を割り込んだ場合には、配当をしてはいけない、新しい支店を出してはいけない、業務停止命令、などのペナルティが金融庁から課されます。
自己資本が薄くなることで、不良債権を処理する過程でも問題が出てきます。不良債権の処理に関する一番分かりやすい方法は、企業の再建の見込みがない場合には、法的な整理を取ることです。こういう場合、事実上その企業が倒産するので、倒産による失業者が増加することにもなります。