第46回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
全体会講義(要旨)「年金制度の将来と私たちの暮らし」
誰もが納得できる税金負担とは
年金は経済と共にあると考えると、経済の動きに対して伸縮的、かつ弾力的に対応するのがよいと思います。今、厚生年金積立金は170兆円です。2050年までを見ると、政府の方針では積立金は増える一方です。保険料を強制的に徴収してお金を余らせ積立金を増やし、給付は徹底的に絞り込む。どう見ても今回の提案は、極めて硬直的です。
では、税金で負担すべき年金給付とは何か。基礎年金の2分の1を国庫負担にする、月額6万6000円のうち3万3000円を税金負担に変えるというのです。
これは、ただではできないので、増税が必要です。増税を納得するには、使い方が適正か、やむを得ないと考えるかどうかにかかっています。お金の使い方をもっと厳重に監視しなくてはいけません。
そもそも年金の税金負担とは、今の所得ではどうしても生活できない人のために、皆で助けましょう、という趣旨ではないでしょうか。経済的に恵まれている人には、税金負担の年金は譲ってもらう。このような考え方はオーストラリア、カナダ、イギリス、スウェーデンなどで採用しています。
スウェーデンは90年代に年金制度の大改革をして、新しい制度に変えました。所得比例年金をベースにして、財源は全部保険料です。税金負担の保証年金というのがありますが、年金額が高い人には保証年金は支払いません。いろいろな事情で、保険料を納めても、もらう年金額が低い人には、年を取った段階で税金負担の年金を保証年金としてプラスアルファで乗せるという形です。
増税を納得してもらうためには、給付を増税にふさわしい形に変えなくてはいけません。その過程で、経済的に恵まれた人には譲ってもらうことにしたのです。日本でも、そういう議論と並行して国庫負担問題を考えざるを得ないのではないでしょうか。
受給開始年齢は、今回の改正では新たに見直さないとなっていますが、給付水準については、よくわからないところがあります。18.30%の保険料を取っても、50%の給付水準を維持できない状況が起こった時、何で調整するかというと、支給開始年齢です。
うまくいかなくなった時の調整弁として登場するのが、支給開始年齢の引き上げだと考えてよいと思います。これでは若い人たちは踏んだり蹴ったりで、ますます年金から離れてしまいます。