第46回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
全体会講義(要旨)「年金制度の将来と私たちの暮らし」
負担増をどう解決するか
では、負担増でバランスシートはどう変わるでしょうか。保険料を上げて、国庫負担を2分の1にして給付を下げる、事実上こういう提案で、すべて将来拠出対応部分に反映します。
保険料が18.30%まで上がることを念頭において、将来支払われる保険料を1回払いで払うとします。保険料が1170兆円から1500兆円に、国庫負担が180兆円から270兆円になり、合わせて資産が1770兆円です。給付は現行維持と仮定すると1430兆円のままで、これから保険料を納める若い世代は、負担の8割ほどしか返ってこない構造になります。
資産超過額は340兆円ですが、将来は給付を50%水準に減らすといっているので、給付債務が減ることを考えると、資産超過額は440兆円に変わります。その金で、過去の債務超過額を帳消しにする。これが政府の考え方です。バランスシートは両方合わせると健全化されますが、これで皆さん納得できるでしょうか。
過去の借金をつくったのは、今の年金受給者であり、団塊の世代です。政府は楽観論に基づいて給付の大盤振る舞いをしたけれども、お金の手当てをあまりしてこなかった。そのために、これから若い人に税金、保険料を払ってもらって穴埋めをしましょうという話なのです。それでは、若い人たちは納得しないでしょう。
もう一つ、お金をもう少し積み増す方法はないのかということです。
将来の見通しが甘く、負担を先送りしてきた責任の一端は、現在の年金受給者および団塊の世代にあるのではないか。そうすると年金受給者になっても、お金を出し続けることを考えなくてはいけない。たとえば消費税の増税を受け入れ、それを年金財源とする方向はいかがでしょうか 。
これからは高齢者の医療費用も、急ピッチで膨らんでいきます。負担は個人、企業とも、部分的に引き受けていかざるを得ない状況です。そうしますと、企業も、厚生年金から離脱したり、合法的に負担を回避する方法を探ることになってしまいます。日本全体として健全なことではありません。保険料を政府がいうように引き上げていいのか、その辺を考えていただきたいのです。