第46回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
全体会講義(要旨)「年金制度の将来と私たちの暮らし」
年金改革の見通し
今年は5年に1度の年金改革の年になっています。昨年11月に厚生労働省案が出て、法案の提出は今年の2月10日といわれていますが、新聞でもいくつか見通しがすでに報道されていますので、概略をざっと紹介します。
保険料については今は凍結。厚生年金の保険料は現在13.58%ですが、これを毎年0.354%ずつ引き上げて、2017年に18.30%に達したら、そのまま固定して維持する。それが将来の方向です。
国民年金は、2005年の4月から保険料を月額280円上げて、将来的には月額一人1万6900円にする。この数字に到達するのは2017年の4月以降です。その段階で長期固定ということです。2月10日の法案が出てこないと、最終決定にはなりません。
給付の抑制は将来的には現役世代の50%水準まで続くことになっていますが、これはサラリーマンのほんのわずかな人をモデルとして算出した数字で、国民の大多数は4割台と考えたほうがいいかもしれません。これは65歳になって新規に年金を受け取る人の年金水準で、しかも2023年というかなり先の話です。
問題は、現在65歳あるいは70歳の人が、今後受ける年金がどうなるかです。今までは消費者物価スライドでしたが、今回政府が提案しているのは、言い方はマクロ経済スライドですが、経済とは何の関係もないスライドです。人口要因に着目して給付の調整をしていくのです。
現役で保険料を負担する加入者が減っていくのを、年金給付のスライドに反映させる。もう一つ、もっと皆が長生きすることも、年金給付のスライド調整に反映させようといっています。
物価上昇率マイナス調整係数のようなものでスライドする。例えば物価が一%上がっても、年金額は0.1%しか引き上げません。物価が上がった分だけ年金額を改善しないので、実質的な年金の価値は少しずつ目減りしていきます。これを長期間続ける予定です。
賃金が毎年2.1%ずつ、物価が1%ずつ上がるというのが、今の政府のシナリオです。それを仮定するとスライド調整の期間は2023年、これから20年近く調整を続けるというのです。2023年までに賃金は4割近く、物価は18%アップするというのに、年金額はほとんどアップせず実質目減りをさせます。これは年金受給者に対して、大変な譲歩をお願いする提案になっているのです。
併せて、基礎年金の国庫負担の割合を2分の1に引き上げることについて、本格的な調整を始めるといっています。具体的には決まっていませんが、年金給付課税を強化して、高い年金を受け取っている夫婦には、これからは所得税、住民税の支払いをお願いするということです。
パートタイマーの厚生年金加入は先送りの公算が高いと思われます。
在職老齢年金については、60歳を過ぎて働きながら年金を受け取ると一率年金給付2割カットとなっておりますが、これを廃止します。
夫婦間の年金分割については、専業主婦の場合、老齢年金を婚姻期間分については夫婦で分割し、年金権を個人単位で貼り付けることになります。ただし夫婦の合意が必要だという、きつい条件をつけて調整をするということです。
遺族年金は、夫を亡くした奥さんの年齢が30歳未満で若く、子どももいないというケースについては、これからは遺族年金の受給を五年限りとします。
次世代支援。出産前のフルタイムで働いていた賃金をベースに、保険料を払ったとみなし、年金額は減らさない。そのように改正したいといっています。