第46回 全国婦人のつどい
「暮らしと金融・経済に関する消費者セミナー」
全体会講義(要旨)「年金制度の将来と私たちの暮らし」
年金制度の現状
日本は最長寿国で、その長い老後を支えるのが公的年金です。
公的年金はよく世代と世代の支え合いといって、保険料相当分と年金額では大分違いがありました。それが、今までの日本のやり方でした。保険料相当分だけで足りない金をどうやって調達するのか。それが、年金問題だと考えていただいたらいいと思います。
現在の年金制度がどうなっているか、少し紹介したいと思います。
厚生年金は日本最大の年金制度です。2000年度までは収支は黒字でしたが、2001年度以降赤字に転落し、毎年赤字を事実上計上し続けている状態です。厚生年金は、これから何もしないと積立金を取り崩す過程に入っていきます。
次にバランスシート、貸借対照表です。資産と負債のバランスを見るものです。これは厚生労働省が、公的年金制度について2000年3月末時点で評価したものです。
まず、将来拠出対応部分。2000年の4月時点で年金制度改革が行われ、13.58%の保険料徴収が始まって、今の制度に書かれている給付約束が将来とも維持されると仮定します。
給付債務1430兆円、保険料が1170兆円、国庫負担が180兆円。公的年金を仮に一回払いでもらうとどのくらいか、総額ベースで見たのが給付債務です。
日本の年金制度は2階建てになっていて、1階は一律に同じ年金をもらえる基礎年金です。基礎年金の給付の3分の1は国庫負担で、相当分を一時金換算すると180兆円です。これに保険料資産を加えると合計で1350兆円。給付債務が1430兆円ですから資産が少なくて、負債が多い。この差額が債務超過です。
給付約束全体の規模から見ると、債務超過は80兆円で、その6%弱です。2000年4月以降の制度と考えると、将来分に関しては、あまり問題はないことになります。
問題は過去拠出対応分です。過去の保険料払い込みで支払を約束したもののうち、今後支払われる部分が720兆円です。しかし、資産は270兆円ですので、残りの450兆円は、これからどうやってお金を工面するか考えなくてはなりません。国民年金、共済年金まで全部合計すると、過去に関わる債務超過は600兆円、国民一人当たり500万円足りないことになります。
これをどのように調達するのか。それが年金問題のまさに核心部分です。
2003年度の当初予算ベースで、所得税は1年間に14兆円、住民税は8兆円弱、法人税は9兆円台ですが、年金保険料は29兆円です。サラリーマンが給料から天引きされている金額で一番多いのは年金の保険料なのです。
では年金給付はどのくらいかというと、2003年度で見ますと、1年間の支払いは約44兆円です。その財源は29兆円が保険料、残りの部分は国庫負担分、積立金の運用収入等を当てている状況です。44兆円という金額は、日本最大の民間ビジネスである自動車産業の国内出荷額の総額約40兆円を超える額です。
国民年金は、未納率が四割近い状況で、20代・30代では未納率は5割を上回っています。これは若い人たちの国に対する不信感です。厚生年金でも、厚生年金の加入者数および事業団体数、いずれもこの5年間減り続けています。