金融教育に関する実践報告コンクール
「金融教育を考える」第1回小論文コンクール(平成16年)
金融教育(ひとり立ちのできる人間をめざそう)
優秀賞
東京都・中央大学杉並高等学校: 髙橋 直子
シミュレーションを学習した際の生徒の声
- 教育費の算出:
- 「こんなにかかるんだ!」
「都内にマンション買えるね」
「僕を育てるよりマンションのほうがよかったかな?」
「親に感謝だね」「兄弟3人だから3倍だね。大変なんだ、我が家は」
- 一人暮らし:
- 「初任給、少ないね」
「手取りで生活できないよ!」
「親と住む方がお金かからないよ」
「高額なものは親に頼むしかないね」
「だから共稼ぎだね」
「洋服はリサイクルで買おう」
「食費はケチれる」
「家電製品は先輩にもらう」
- 住宅購入:
- 「欠陥住宅を購入してもローンは払い続けるの?」
「震災で壊され、賃貸に住んだとして、ローンと賃貸料の両方払うことになるの?」
「持ち家のほうが男になった気がするよ」
「借家は自由に内装ができない」
「家を取り壊しても土地がのこる」
「地価が下がっているから財産にならないので、借家でもいいかな!」
「毎月のローンを25年間支払うの?できるかな完済が65歳だよ」
「僕は早めに買う計画をするな」
「広告の価格だけじゃ買えないんだ」
- 信用経済:
- 「給料が高いなら消費者金融に就職してもいいな」
「TVCMの消費者金融の歌がすぐにでてくる」
「○○消費者金融のCMがいいよ」
「友達にCDを借りて約束期日に遅れても、延滞金は支払わなくてもいいのが約束だね」
「借用書にはかならず返済期日を」
「借りたものはかならずかえす」
「年金利を比較すると判断できる」
- 多重債務:自転車操業のシミュレーション:
- 「ほんとうにこうなるの?」
「結婚相手にこんなに借金があったらどうしよう?」
「借金のある人を見分けられるかしら」
これからの金融教育
高度経済成長が望めない日本で、所得格差の二極化が進んでいるといわれ、若者の20%以上がフリーターを余儀なく選択せざるを得ない厳しい時代である。一方では規制緩和の流れの中で、物やサービスがあふれ、消費意欲を刺激している。
家庭では消費者教育なるものを受けた経験のない親が、(携帯電話アンケートにも見られる)子供に、無意識に、欲しいものを安易に手に入れることを体験させていて、社会では自己責任だけが強調されている。
このような状況で、欲しい物があった時すぐに買えるシステム(簡単に借金)がますます拡充されてきている。たとえば、物を買うときもクレジットカードやキャッシュカードを使う機会が多くなり、今後はますます、お金は「目に見えない消費形態」になっていくだろう。
だからこそ、「お金をきちんと管理する能力」はかつてないほど必要性が増してくると思う。つまり消費者が自分で考え、判断し、責任をもって生きぬくためには消費者教育が必要不可欠だということを実感しているはずである。
そのためには、早い時期から学校教育の現状にあわせて、消費者教育を取り入れて、きちんとした金銭感覚を身につけさせ、社会に出るまでに自己管理、自己責任を自覚させる教育でなければならないと思う。
それには、フレッシュ情報(啓発団体の協力や消費者センターの相談員の実話)を取り入れた消費者教育を学校で行うのがよいと思う。
このことにより、将来、子供達は日常生活の中から、勤労とお金の価値をみいだし、自らお金の管理をし、「NEED」、「WANT」を判断する自覚を持つようになるであろう。
また、単にクレジットは怖いという先入観を持つのではなく、自己責任で消費する力を育成することにより、「みえないお金」と「みえるお金」の認識ができるような暮らしをすることもできると思う。
このように、お金とうまく付き合い、信用経済社会で賢く暮らしていくために、「消費者教育」は重要な教科であるといえる。
もし、「消費者教育」を独立教科とすることができれば、自立した消費者を育てるための近道になると思う。このことは将来、日本の経済によい影響をもたらすことにも通じるではないかとも思われる。