金融教育に関する実践報告コンクール
「金融教育を考える」第1回小論文コンクール(平成16年)
はじめに
1.「金融教育を考える」小論文コンクールについて
金融広報中央委員会では、教育関係者の方々を対象とした新事業として、第1回「金融教育を考える」小論文コンクールを開催いたしました。
このコンクールでは、学校における金融教育が、より広く普及することを願い、その一助とさせて頂くため、教育の現場におられる教師の方々や、教育に関する研究者の方々より、金融教育に関する実践事例、研究成果、提言などを募集いたしました。
今回ご応募頂いた16編につきまして、予備審査を行い11作品を最終審査会にて審査することとなりました。
最終審査会におきましては、予備審査を通過した11編について審査いたしました結果、優秀賞に4編、奨励賞に1編が、特に優れている作品として入選作品に選ばれました。
本作品集では、優秀賞の4編につきまして収録させて頂き、皆様にご紹介することといたしました。
2.学校における「金融教育」について
学校における金融教育につきましては、学校関係者を始め、多くの方々の間で、その必要性に関する認識が徐々に高まってきております。
例えば、金融広報中央委員会の実施したアンケート調査結果では、約6割の方が「学校においてもっと積極的に金融に関する教育に取り組む」ことを要望しています。
その背景には、近年の、私たちの暮らしを取り巻く金融経済環境の変化があります。例えば、金融自由化の進展や経済のグローバル化による市場競争の浸透など、私たちにとり自らの判断で選択できる商品やサービスの幅が広がりました。しかし、その一方で、自らの意思や判断で選択した結果に対して、自らの責任(自己責任)が問われるようになってきております。
さらに、社会問題化している多重債務問題や、振り込め詐欺などの消費者トラブルは、一段と深刻な広がりをみせています。
しかし、多くの消費者は、金融や経済に関する基本的な知識、消費者トラブルの予防や、万一トラブルに巻き込まれた場合の対応などについて、必ずしも十分な知識を持っているとはいえないのが現状です。しかも、最近では消費者トラブルに、中・高校生が巻き込まれるケースも目立って増えてきております。
このような金融経済や社会環境の変化を背景にして、将来を担う子どもたちが、健全な経済感覚のもとで、自らの生活設計を立てながら、適切な判断や選択ができる能力を高めていくことが必要になってきているとの認識のもとで、学校において「金融教育」に関する実践が徐々に広がってきております。
3.「金融教育」の内容について
「金融教育」という言葉につきましては、様々な理解があり、例えば、利殖やお金の投資技術に関する知識とか、金融商品の知識、金融機関の機能などに関する教育など、狭い範囲に限定した理解もあります。
しかし、現在、行われている様々な実践事例をみると、「金融教育」は、上記のように狭義に捉えるのではなく、より幅広い内容として理解する必要があるのではないかと考えられます。
例えば、金融広報中央委員会が、学校における金融・経済に関する具体的な教育を実践し、その効果的な方法の研究を依頼している「金融教育研究校」「金銭教育研究校」などにおける実践例を見ると、
- ものやお金を大切にすることを通じて正しい金銭感覚を養う「金銭教育」的なもの
- 金融や経済の機能や仕組みを理解する「経済教育」的なもの
- 健全な家計管理と将来の生活設計を立てる力を身に付ける「生活設計」的なもの
- 消費者としての権利や責任、金融トラブル防止やトラブルへの対応力を身につける「消費者教育」的なもの
- 勤労体験を通じて勤労の意義や将来の職業選択について考える「キャリア教育」的なもの
などの実践事例があります。
当委員会では、先の各研究校などで研究・実践されてきた取り組みのほか、研究校以外の実践事例も含めて集約のうえ、「金融教育」に関する実践事例集(「金融教育ガイドブック」-学校における実践事例集-)を作成し、様々な実践例を教育関係者の方々に紹介しております。
今回、コンクールに入選した4作品は、いずれも「金融教育」の実践例を含む優れた作品ばかりです。皆様におかれましては、この作品集を学校における「金融教育」の実践などに役立てて頂ければ幸いに存じます。
最後に、今回の小論文コンクール開催にあたりまして、審査委員長をお引き受け頂き、講評をご執筆賜りました、お茶の水女子大学大学院教授牧野カツコ先生をはじめ、審査委員の皆様におかれましては、最終審査会にて厳正かつ慎重なご審議を頂きましたほか、今後のコンクールの運営につきまして貴重なご助言を賜りました。あらためまして、心より感謝申し上げます。
平成17年3月
金融広報中央委員会