相続税と贈与税
2.相続財産をどのように分けるか
相続財産をどのように分けるか
まず、遺言書があって相続分を指定している場合には、「遺留分」を侵していない限り、その指定に従います。
遺言書がない場合や、遺言書があっても遺産の一部しか指定していない場合には、相続人全員の話合いで分け方を決めます。これを「遺産分割協議」といい、遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判所に「遺産分割の調停」を申し立てることができます。調停が不調に終わったときは、「審判の手続」によって分割することになります。
だれでも満15歳になると遺言書を書くことができます。しかし、民法では法律に定める一定の方式に従うことを要請していますので、遺言書があっても形式が整っていないと法律上無効となる場合もあります。
法定相続人の相続分
遺言書がなく他に同順位の法定相続人がいない場合には、例えば、被相続人に子も親も兄弟姉妹もいない場合には、被相続人の配偶者の法定相続分は相続財産の全部となります。遺言書がなく法定相続人が複数いる場合には、相続人が話し合って自由に分け方を決めてよいのですが、民法では、同順位の法定相続人がいる場合の一つの基準として、それぞれの相続分について次のように定めています。
1. 相続税はどんなときにだれにかかるか第1順位 | 配偶者2分の1、直系卑属2分の1 |
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第2順位 | 配偶者3分の2、直系尊属3分の1 |
第3順位 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1 |
直系血族や兄弟姉妹が2人以上いる場合には、それぞれ均等に分けます。代襲相続人の相続分は、自分の親が相続するはずであった相続分を、代襲相続人の間で法定相続分に従って分けます。
遺産分割協議
相続人全員が遺産分割について納得した場合には、各相続人が実印を押して、遺産分割協議の内容を書面に作成します。遺産分割協議書の作成は法律で義務付けられているわけではありませんが、後日の争いを避けるためにも作っておきましょう。また、遺産分割協議書は、不動産や株券の名義変更の際や相続税の申告書にも添付する必要があります。
相続人の中に未成年者がいる場合には、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらわなければなりません。
遺留分とは
本来、財産の所有者は、遺言や生前贈与によって自分の財産を自由に処分できることになっていますが、全財産を特定の人に与えてしまうと、配偶者や子どもが生活できなくなってしまうことにもなりかねません。
そこで、一定の制限を加え、遺族の生活を保障しようとするのが、遺留分の制度です。
「遺留分」とは、相続財産の中で、必ず相続人に残しておかなければならない財産の最低割合のことで、その割合はだれが相続人であるかによって異なります。
例えば、配偶者と子どもが相続人である場合の遺留分は、各人の相続分の2分の1と定められています。
遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することを「遺留分侵害額の請求」といいます。この遺留分侵害額の請求ができるのは配偶者と直系血族に限られ、兄弟姉妹は請求することができません。
遺留分侵害額の請求をすることができる期間は、相続の開始や遺留分を侵害する贈与や遺贈のあることを知った日から1年間に限られています。また、相続開始の時から10年間経つと、実際に相続開始の事実を知らなくても、遺留分侵害額の請求をすることはできなくなります。
一口メモ残された配偶者の住まいの確保
子も親もいない夫婦で、マイホームだけが財産であるというような場合には、「全財産を配偶者に相続させる。」という遺言書を作成しておけば、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺産の全部を配偶者が相続することができ、残された配偶者の住まいを確保することができます。