相続税と贈与税
1.相続税はどんなときにだれにかかるか
相続と相続税
相続とは、ある人が亡くなったとき、その人の財産(金銭や不動産だけでなく、すべての権利・義務を含みます)を配偶者や子どもなどが引き継ぐことです。民法では、ある人が亡くなったときから相続が開始されることとなっています。また、亡くなった人は被相続人、財産を引き継ぐ人は相続人といいます。
日本の国内に住所がある相続人は、相続財産がどこにあるかを問わず、すべての財産について、相続税がかかります。国内に住所がない相続人は、相続した財産のうち、日本の国内にある財産だけに相続税がかかります。
ただし、平成29年4月1日以降は以下の個人について取扱いが異なります。
- 日本に居住している在留資格者で一定の場合には日本の国内にある財産だけに相続税がかかります。
- 国外の財産を相続によって取得した個人が、日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に相続人又は被相続人が日本国内に住所を有していた場合など、相続人又は被相続人が一定の要件に該当する場合には相続税の納税義務者に該当します。
相続人の範囲と順位
民法では、相続人の範囲と順位を次のように定めています。これらの相続人を「法定相続人」といいます。
第1順位 | 配偶者、直系卑属 |
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第2順位 | 配偶者、直系尊属 |
第3順位 | 配偶者、兄弟姉妹 |
- (注)
- 親や祖父母などを直系尊属といい、子どもや孫などを直系卑属といいます。また、直系尊属と直系卑属をあわせて、直系血族といいます。
被相続人の配偶者は常に相続人となります。ただし、正式な婚姻関係が必要なので、内縁の妻には相続権はありません。配偶者以外では、まず、子どもが相続人となります。子どもがいない場合には、被相続人の親が、子どもも親もいない場合には兄弟姉妹が相続人となります。
子どもが既に死亡している場合には、その子(被相続人にとっては孫)が相続人となります。これを「代襲相続」といいます。
民法上、養子にも実子と同じ相続権がありますが、相続税の計算をする場合には他に実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までと制限されています。
胎児は、相続に関しては既に生まれたものとみなされますが、死んで生まれたときは適用されません。相続税の計算をするときは、一応胎児を除いて計算をしておき、生まれた後に、更正の請求などをして計算をやり直します。直系尊属には、養父母(養子縁組をした法律上の父母)は含まれますが、継父母(実際の父母ではなく養子縁組もしていないが同一世帯の父母)は含まれません。相続人となる兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子ども(甥姪)に限り、代襲相続が認められます。
相続放棄と限定承認
相続によって受け継ぐ財産の中には、現金・預金・土地や株式などの積極財産のほかに、借入金や未払金のような消極財産つまり負債も含まれます。
資産より負債が多い場合や、どちらが多いか判断できないような場合には、「相続放棄」、「限定承認」という制度を選択することも可能ですので検討してみましょう。ただし、相続の開始(被相続人の死亡)があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。
「相続放棄」をするには、他の相続人と足並を揃える必要はなく、自分1人でもすることができます。家庭裁判所では関係者を呼び出し、放棄を確認します。相続放棄が認められると、その相続人は始めから、相続人でなかったものとみなされますが、相続税の基礎控除や非課税限度額の計算の上では、法定相続人の数に入ります。
「限定承認」とは、相続財産として資産も負債も引き継ぎますが、プラスの資産で払える限度で負債も引き継ぐものです。この制度は被相続人にどの程度の負債があるかすぐに分からない場合にはメリットがありますが、相続人全員の同意が必要であるほか、相続の放棄に比べると手続きが煩雑です。
限定承認が行われた場合には、相続財産は、相続税評価額でなく、被相続人が時価で売却したものとみなされます。その譲渡による所得税は準確定申告で納めることになりますが、被相続人の債務として、相続財産の限度で支払えばよいことになります。
一口メモ準確定申告とは
財産がいくらあると相続税がかかるか
相続財産の金額が基礎控除の3,000万円と、法定相続人1人につき600万円との合計額(これを相続税の基礎控除額といいます)以下の場合には、相続税の申告書を提出する必要もありませんし、相続税を納める義務もありません。
基礎控除額を超える場合には、超える部分について相続税の計算をしなければなりません。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
一口メモ遺贈とは
遺贈とは、被相続人の遺言によって行わる財産の処理のことです。遺贈を受ける人のことを「受遺者」といいます。
遺贈は、特定の財産を譲る「特定遺贈」、財産を特定せず全財産の分数割合によって財産を譲る「包括遺贈」に分けられます。
包括遺贈を受ける「包括受遺者」は、民法において相続人と同一の権利義務を有することとされています。