先生のための金融教育セミナー
2022年度 先生のための金融教育セミナー
オンデマンド配信の内容
金融教育の専門家による授業のヒント
「元日経記者が教える金融知識の伝え方」
経済ジャーナリスト 後藤 達也 氏
スマホ・SNS時代の情報発信は、受け手の数秒、数十秒という時間を奪い合うという構図になっています。この五年、十年で世の中の情報の集め方が変わってきている中で、短時間で相手に「刺さる」情報提供、仕組みづくりをすることが重要になってきています。
教育現場でも、伝えたいことを色々整理して伝えていると思いますが、伝えたいことが、受け取る側のニーズや関心と必ずしも一致しないということはよくあると思います。生徒のニーズや関心が伝えたい内容に追い付いていない部分について、一方的に話すだけではやはり伝わりません。伝えたいことに生徒のニーズや関心を引っ張ってくる「ニーズの喚起」と、伝えたいことの範囲を広げて世の中のニーズにより接近していく「ニーズへの接近」が必要です。
ニーズを喚起するために私がSNSで情報発信する際に心掛けていることは「ひと目でわかりやすい」ことです。ぱっと見て「今何が起きているのか」「何が大事なのか」がわかるようにします。たとえばグラフを作成する場合も、強調したいポイントはどこなのかを意識しながら作成します。また、グラフを一つ用意するのではなく、たとえば短期的な目線のグラフと長期的な目線のグラフを二つ並べて見せることで、ひと目でわかりやすくなる場合もあります。
また、ニーズへの接近という面では、最近は円安について色々な報道がありましたが、小難しい面も多々あったと思います。これを説明する際に、円安の影響でiPhoneが一気に2万円近くも値上げされたというニュースを取り上げると、自分ごととして非常に伝わりやすい話題になります。円安が自分たちの生活にどのように影響するのかを身近な話題で伝えることによって、円安への関心や理解がぐっと高まります。
受け手がどういう状況にあるのかという視点を持ち、少しでも受け手の関心を引きつける工夫をすると、伝わり方が大きく変わると思います。SNSなどでは、どのくらい見られているか、どのくらい「いいね」されているかというフィードバックが瞬時に戻ってきます。授業においても、生徒が授業を受けた後の感想、ここの部分はちょっと分かりにくかったとか、つまらなかったというようなフィードバックを踏まえて新しいことを試してみて、上手くいかなかったことはなぜ上手くいかなかったのかを考えながら、試行錯誤を繰り返していくことが重要なのではないかと考えています。