先生のための金融教育セミナー
2022年度 先生のための金融教育セミナー
オンデマンド配信の内容
現役教員による授業実践
「生活科を中心とした小学1年生からはじめる金融教育の提案
-離島・へき地地域のコミュニティ経済を活かして-」
前)竹富町立波照間小中学校 教諭
那覇市立上間小学校 山本 銀兵 教諭
本報告は、前任校の竹富町立波照間小中学校(小学1年生)での実践の一部です。同校は、都市部から遠く離れた波照間島にあります。そこには、子どもを「ウタマ」と呼び、島の未来を担う希望として大切に育てる風土があります。
先行研究における課題として、子どもたちの消費者市民としての経験不足、意識形成の不十分さが指摘されていました。そこで、子どもたちが自らを経済システムの一員として意識できるような指導過程が必要だと考え、次の二つの方針を授業に盛り込みました。一つ目は「生産と消費」という経済活動の一連の流れを指導過程に仕組むこと、二つ目は子どもたちに当事者意識を持たせる指導過程を仕組むことです。
具体的には、自分たちが栽培したものを売って得た資金で、必要なものを購入するという経済活動を学習過程の中心として設定しました。学級のみんなと仲良くなるためにパーティーがしたい、という子どもたちの願いから学習がスタートします。そして、パーティーに必要な費用は、生活科で育てようとしている野菜を売って得ればいいのではないかという見通しに繋げていきます。つまり、生産活動と消費活動が単元を通して実現されるように計画を練りました。
波照間島にはコンビニエンスストアやスーパーマーケットはなく、五つの共同売店が地域経済を担っています。子どもたちは、町探検で繰り返し共同売店に通い、その特徴を調べていく中で、「自分たちの育てているキュウリも売ることができるのでは」と気付きます。子どもたちは目的意識や当事者意識を強め、より熱心に栽培活動に取り組むようになりました。快く協力してくださった波照間島の温かい地域社会あってこその本実践だったと思います。
本実践は生活科における金融教育として、複数の教科・領域を合科的に扱うカリキュラムを計画しました。生活科を軸に、国語、算数、図工、特別活動を、それぞれの目標に沿って、関連させました。金融教育の成果としては、売上を財布に入れて大事に保管しようとする姿から、お金を大事にしようとする態度の芽生えを。売上の合計額を算出しようと難しい計算にも果敢に向き合おうとする姿からは、お金に対する責任ある態度の芽生えを見取ることができました。