2015年度 先生のための金融教育セミナー
【小学校・中学校向け】
3.鼎談
「『金融教育プログラム』年齢層別目標の改訂と活用のポイント」
帝京大学教職大学院 小関 禮子 教授
千葉市教育委員会 山﨑 二朗 氏
国立教育政策研究所 大杉 昭英 初等中等教育研究部長
まず、「学校における金融教育推進のための懇談会」の座長を務める大杉氏が、『金融教育プログラム』の「年齢層別の金融教育内容」を「学校における金融教育の年齢層別目標」として改訂したことの趣旨について、「現行学習指導要領の趣旨を反映させるとともに、学習成果(ラーニングアウトカム)を重視する世界的な教育改革の潮流を踏まえて、理解だけでなく態度や行動につながることを意識して改訂したものである」と述べられました。
続いて、「年齢層別目標」の注目ポイントについて伺いました。小関氏は、「最も注目すべき点は、『生活設計・家計管理に関する分野』の中に『事故、災害、病気などへの備え』という小分野が設けられたこと」だと述べられ、「日常生活の中で起こり得るさまざまな危機に対して、生活をしていく上で予測を立て、備えるということがとても大事である」と話されました。また、山﨑氏は、「『金融教育の目的を実現する上で重要な概念』(冊子17ページ)の4つの概念、特に、『自己責任意識』に注目している。これからの時代、予測不可能な中で選択し、その結果に対して責任を持っていかなければいけない。特にお金に関わる部分で、社会の中できちんと生きていく上で、自己責任意識がとても重要になるのではないか」と述べられました。
続いて、「年齢層別目標」をどう活用するか、具体的な活用法あるいは活用プロセスについて伺いました。大杉氏は、「小・中・高等学校を通して年齢層別の目標は236項目あり、各教科における発展的な学習や総合的な学習の時間も使って、できるだけ多くの目標を達成できるような学習をしていくことが大切である」と述べられました。次に、小関氏は、「一つ一つの項目を段階的に達成していくことが望ましいが、そういった時間的余裕がない場合は、子供の実態を把握して、特に身に付けさせたい力に着目して指導することもできる」と話され、さらに「教科等が明記されていない項目については、総合的な学習の時間でいくつか関連付けて指導することも可能ではないか」と述べられました。また、山﨑氏は、「全項目が一覧表になっており、しかも学校段階別に比較して見られる形になっていることがとても良い」とした上で、「この表を参照することによって、授業で取り上げる題材や学習素材の全体における位置付けを知る、各目標の語尾(「理解する」、「身に付ける」など)から授業の形態(講義形式がいいか寸劇等を取り入れるかなど)を検討する、各目標と比較して自分の授業の成果と次の課題を考える、といったことができるのではないか」と述べられました。
最後に、最近注目されているアクティブ・ラーニングを金融教育にどう取り入れていくかについて伺いました。小関氏は、「小学校の場合には、子供たちが見たり聞いたりしていることを授業の中で出し合って整理し、自分の言葉で説明できるようにすることが重要である。それがアクティブ・ラーニングにつながり、また自分の生活を見直すことにもつながっていく」と述べられました。山﨑氏は、アクティブ・ラーニングを取り入れる際の大切なポイントとして、「『金融教育を実践する上で念頭に置いていただきたい概念』を念頭に置いて進めること、学習内容と学習活動は一方だけで成立するものではなく両輪だと意識すること、授業を通して習得させたい力をどこに置くのかという見通しを持つこと」の3点を挙げられました。また、「子供の興味を引く、調べてみたいと思わせる、実際に追究・体験させる、理解として定着させる、実生活で確認・追体験させるといった学習サイクルを意識した授業を進めることが有効ではないか」と述べられました。