2015年度 先生のための金融教育セミナー
【小学校・中学校向け】
2.基調講演
「児童・生徒の生きる力の育成と学校における金融教育」
帝京大学教職大学院 小関 禮子 教授
金融教育とは、お金や金融のさまざまな働きを理解し、より良い社会づくりに向けて主体的に行動できる態度を養う教育です。社会がどのように変わろうとも、生き方に関わる教育として金融教育を行う必要があると考えています。
今の子供たちは、ものやお金に囲まれて、情報に踊らされているのが実態です。毎日の生活の中で子供たちが受け身になっており、主体的に考える場面が少なくなっていることが、お金や情報に関わる問題につながっています。
お金やものを大切にするという指導も大切ですが、生活のあり方そのものを見直すという教育が必要ではないでしょうか。お金の使い方はその人の生活観や価値観を表すと言われますが、小学校、中学校の子供たちにとっては、逆に普段の生活の仕方が知らず知らずのうちに生活観や価値観を作り上げてしまうのではないかと思います。金融教育は、日常生活におけるお金の使い方を通して、子供たちの考える力、判断して決定する力、行動する力の育成に寄与するものです。
知識、意識、行動がバランスよく整って初めて、子供たちはお金についてもきちんとした考えを持つことができます。そのためには、問題解決能力を育てていくことが大切です。「学校における金融教育の年齢層別目標」の中にも、問題解決型の学習につながる具体的な目標がたくさん挙げられています。一度に問題解決能力が子供たちの身に付くわけではなく、子供たちは失敗を繰り返すことで学び、より良いものを見つけ出す力を付けていきます。時間がないと、つい教え込みになりがちですが、子供たちに考えさせる、ハウツーでない指導が、思考力や判断力の育成につながります。
また、金融教育は、自らを律する、生活を支えてくれる人に感謝する、お金を人のために生かすといったことを通して、豊かな心を育てることにも大きく寄与すると思います。
子供たちが学校で学んだことを自分の生活に取り入れていくことができなければ、金融教育の効果は十分とはいえません。学校、家庭、地域社会の三者が子供の日常生活について深く認識して連携、協働することが、子供たちの生きる力の育成に深く結び付いていくのではないかと考えています。