金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
金融商品の選び方・組合せ方
リスクとリターンの関係からみた3つの基準
リスク(risk)という言葉の意味を辞典で引いてみると、「危険、危険性、損害のおそれ…」といった訳語が出ています。これだけを見るとリスクをとるということは悪いこと、避けるべきこと、というような印象がつきまといます。ただリスクをとるといった場合、「あるものを得るために、他の何かを失うことをいとわないこと」といったニュアンスも含まれており、「何か自分のめざすもの(利益など)を最大限得ようとして、ある種の危険を認識し、取捨選択して受入れること」ともいうことができます。これはまさに私たちが金融商品を選ぶとき、よく理解しておかないといけないポイントです。私たちの周りにある金融商品には、大なり小なり何らかのリスクがあるため、良い結果を得るためにはリスクの性格、特徴をよく知り、自分なりにリスクとのつきあい方を工夫していくことが大切です。
それでは、金融商品にはどのようなリスクがあるのでしょうか。主として以下のようなタイプがあります。
主なリスク | 内容 |
---|---|
価格変動リスク | 市場の変動によって損が出る可能性 |
為替変動リスク | 価格変動リスクのうち、特に外国為替相場の変動によって損が出る可能性 |
信用リスク | 預金先の金融機関や社債・株式等の発行体である企業の経営悪化・破綻によって損をする可能性 |
流動性リスク | 必要なときにすぐに換金・売却できない可能性 |
価格変動リスク
価格変動リスクは、金融商品の価格が、それを売買している市場において需給関係などから変動し、時価が購入時の価格に比べて安くなり、売却すると損が出る可能性や、逆に時価が高くなり売却益が出る可能性があることをさします。マーケット・リスクとも呼ぶことがあります。
為替変動リスク
為替変動リスクは、価格変動リスクの一種で、外国為替相場の変動に起因する価格変動リスクを意味します。外貨預金や外貨建て債券などを購入する場合に注意しなければいけないリスクです。為替変動リスクを回避するためには、為替ヘッジという方法があります。なお外国債券でも、利払い・償還とも円建てのものであれば、為替リスクはありません。
信用リスク
信用リスクは、預金を預けている金融機関、債券・株式などの発行体である企業、保険を販売している保険会社、の経営が悪化ないし破綻して、手持ちの金融商品(預金、債券、株式、保険等)の価値が下がってしまい、最悪の場合、無価値になってしまう可能性をさします。
流動性リスク
流動性リスクは、お金が必要なとき、保有している金融商品がどのくらい換金あるいは売却しやすいかの目安です。たとえば、市場でよく取引されている企業の株式ですと、いつでも自分の好きなときに売ることができる(流動性リスクが低い)でしょうが、特殊な債券は、売ろうとしたときに常に買い手がいるかわからないため、いつでも売却できるわけではないし、場合によってはまったく買い手がつかないかもしれません(流動性リスクが高い)。すなわち流動性リスクは、その金融商品をもとにしてお金を用立てる場合の難易度を示しています。
リスクとリターン
これらのリスクを、3つの基準(安全性、流動性、収益性)でみてみると、価格変動リスク、為替変動リスク、信用リスクが小さいことが安全性の高さに、また流動性リスクが小さいことが流動性の高さにつながります。また、収益性はいわゆる投資に対するリターンに相当します。したがって、先に説明してきたように、リスク(安全性、流動性)とリターン(収益性)には密接な関係があります。つまりリスクが小さければリターンは低く(ローリスク・ローリターン)、リスクが大きければリターンは高く(ハイリスク・ハイリターン)というのが一般的です。
このようなリスクとリターンの関係を、個々の金融商品においてよく確認して選択することが重要です。特に、一見金利が高かったり、かなり利益がでそうな金融商品(ハイリターン)は、その背後にどんなリスクがあるか、金融機関などから説明を十分に受けて確認しておくことはとても大切です。
なお、リスクとリターンの関係は状況により変化することがあります。
例えば、普通預金や定期預金は一般的にローリスクであると考えられていますが、物価が大幅に上昇しインフレになった場合には、資産価値が実質的に目減りすることになります。また、海外で生活する計画のある人にとっては、当該国の通貨建ての外貨預金を積み立てることは、為替リスクを回避することにつながります。
古今東西の先人が残した投資等に関する格言
商品の種類の選択や売買のタイミングは、投資家自身が自己責任で決めるものです。投資におけるノウハウは、投資家自身が投資の経験で身につけていくものですが、先人たちが残した投資に関する格言は参考になります。そうした格言のうち代表的なものを挙げておきます。
卵はひとつのかごに盛るな
いくつかのかごに卵を分けて盛ることで割れるリスクを減らすことになぞらえて、資金の分散投資を説いています。
遠くのものは避けよ
よく知らないタイプの商品に飛びつくより、身近なよく知った商品に投資するほうが、「えっ、知りませんでした」という情報不足から生じるリスクを少なくできます。
休むも相場
相場の動向がわからないときには、取引をせずに休むことも大切だという教えです。
入る(いる)を計って出ずるを制する
入ってくるお金を計算して、その範囲でお金の使い方を考えるという教えです。
金利変動と金融商品の選択
物価上昇や下落の動きがあると、中央銀行は、政策金利の変更や量的な引締策あるいは緩和策などの対応を行って、その経済的な影響を最小限に止めるよう努力します。こうした政策対応に伴って、市中では、金融機関の提供する金融商品の金利水準が動きます。こうした金利変動の状況の中で、賢い消費者として、私たちはどういう行動をとればいいのでしょうか。1つの例として次のような対応をご紹介します。
先行き金利が上昇すると判断される場合、変動金利型の金融商品が収益性の面で有利になります。逆に、先行き金利が低下すると判断される場合は、固定金利型(確定利回り)が有利です。
また、固定金利型の場合も満期時に金利が見直されるため、先行きの金利の見通し(予測)に合わせ、先行き金利が低下すると判断される場合は満期までの期間の設定を長くし(長期固定型)、先行き金利が上昇すると判断される場合は短くする(実質変動型)ことにより、運用の効果を上げることができます。
また、ローン商品では、先行き金利が上昇すると判断される場合、返済中に金利負担が増えることがないため、固定金利型が有利になります。逆に、先行き金利が低下すると判断される場合には、返済中であっても金利負担が減るので変動金利型が有利です。
つまり、金利が上昇するか低下するか、それが緩やかなのか急激なのかなど、先行きの金利動向をどう判断するかは、適切な金融商品の選択にとって重要な意味があります。