金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
金融商品の選び方・組合せ方
収益性―どのくらいの運用利益が見込めるか?
収益性とは、その金融商品で運用することによって期待される利益が多いか少ないか、という点に着目した基準です。
大事な資金をつぎ込むわけですから、できるだけ多くの利益を期待したいのはやまやまですが、これまで説明してきた安全性や流動性という側面にも留意していく必要があります。金利や利回り、価格などの高低といった表面的な数値だけからその商品を評価するのは、必ずしも適当ではないのです。
一般に、収益性と安全性、収益性と流動性の間には、おおむね下の図のような関係があります。以下では、収益性と安全性、収益性と流動性、という2つの関係を踏まえながら、具体的なポイントをいくつか挙げてみましょう。
安全性との関係─金融商品の価値の変動はリスクだが、チャンスでもある
金融商品の価値や利益が変動しないということは、安全性が高い反面、後々もっと高い利益や値上がりのチャンスがあったとしても、これをあきらめることにつながります。価値や利益が変動する商品は、その分リスク、不確実性を背負い込むことになりますが、後々チャンスが生まれたときには、それに見合う利益を手に入れることができます。
金融商品の収益性を考える場合、当初の利回りの優劣もさることながら、先行きの金融経済情勢の変化などにより金融商品の価値が変動し、チャンスが生まれる可能性があるか、あるいはリスクが拡大するのかといった点も考慮する必要があります。
流動性との関係─便利なものはコストがかかり、中途解約はペナルティーがかかる
金融商品の換金が自由であったり、その手続きがスムーズである(流動性が高い)ということは、1つの便利なサービスを受けている、ということになります。しかし、このようなサービスを受けるには有形無形のコストがかかり、金融商品の価値や利益から、こうしたコストが差引かれて、その分収益性の面では不利となるのが通常です。金融商品から生じる利益は、お金を預けたり(貸したり)、出資したりするという契約に基づいて支払われる対価です。したがって、こうした契約を途中で解約するということは、その分ペナルティーがかかり、本来生じる利益が少なくなるのが一般的です。
金利の基本は年利
運用している資金が一定期間内にどのくらいの割合で増えるかを表すものが利回りです。店頭やパンフレットなどに表示されている金利は、通常、1年間にどのくらいの割合で増えるかを示した年利です。
また、外貨預金や仕組み預金などで「年利12%」といった表示をみて驚いたことはありませんか。よく見ると預入期間は「3ヶ月」などと、書かれています。この場合、3ヶ月でつく金利はどのくらいでしょうか。12%は年利ですから、1ヶ月当り1%の金利となります。従って3ヶ月なら3%になります。そしてここから利息に対する約20%の税金が引かれるので、税引後は、約2.4%ということになります。
預け入れ期間が、1年より短い場合は、年利の大きさに惑わされずに、こうした計算をして実際の金利がどれくらいか確かめましょう。
ただ、金融商品の中には、金融商品から生じる利益や、金融商品自体の価格・価値が変動するため、あらかじめ利回りを表示できないものも多くあります。これらの金融商品では、参考として、過去の平均利回りを表示している場合もありますが、あくまでも参考であって、実際の金利は、その表示された利回りを上回ることも下回ることもあることに注意する必要があります。
元本組入れや再投資が行われるか
定期的に受取る利息を元本に組入れた(合算した)うえで、次期の利息を計算したり、元本から生じる利益を、一定期間を置いて自動的に同じ商品へ再投資するタイプの金融商品があります。これらの商品は、継続して運用することで、元本組入れなどを行わない商品よりも収益性の面では有利になります(複利の計算やその効果については、 コラム「複利効果と72の法則」を参照してください)。その反面、利息などを途中で受取ることはできないので、流動性の面では不利になります。
なお、主に預貯金において、元本組入れを行うかたちで利息が計算されるものを複利商品、行わないものを単利商品と呼んでいます。また、投資信託などの投資商品で利益を再投資するものを累積投資型、利益を分配するものを収益分配型と呼ぶことがあります。
解約手数料、解約金利はいくらか
中途解約が認められる場合、解約手数料を差引かれたり、約定金利(契約どおり満期まで運用した場合の金利)より低い解約金利が適用されるなど、ある程度のペナルティーがかかるのが通常です。また、一部解約ができるものは、解約の可能性を加味して価格や利益が計算されていることもあり、それができない同タイプの商品と比べると、収益性の面では不利となります。
収益性と安全性、収益性と流動性との関係は?
複利効果と72の法則
元本に利息が組入れられて毎年複利計算されていくと、期間が長くなるほど元利合計が大きく増えていくことになります。これを「複利効果」と呼んでいます。
また金利が高いほど複利効果が発揮されることも特徴です。
期間 | 1% | 3% | 5% |
---|---|---|---|
5年 | 105.1 | 115.9 | 127.6 |
10年 | 110.5 | 134.4 | 162.9 |
15年 | 116.1 | 155.8 | 207.9 |
20年 | 122.0 | 180.6 | 265.3 |
25年 | 128.2 | 209.4 | 338.6 |
30年 | 134.8 | 242.7 | 432.2 |
35年 | 141.7 | 281.4 | 551.6 |
38年 | 146.0 | 307.5 | 638.5 |
たとえば30歳の人が100万円持っていて、税引き後年利1%で複利運用できるとすると、30年後の退職時には134.8万円、3%で運用できるとすると242.7万円、5%で運用できるとすると432.2万円になります。金利が高ければ複利効果もより発揮されるわけですが、金利が高いということの裏にはリスクも高いことがあることも肝に銘じておくべきです。
一般に今あるお金が倍になるのに何年かかるかを示すのに、72の法則があることが知られています。計算式は、
72÷年利=倍になる年数
です。たとえば年利3%なら72÷3=24年、4%なら72÷4=18年です。
それでは10年でお金を倍にするためには、どのくらいの年利が必要でしょうか。これは、この式を変形させて72÷10=7.2%と計算できます。