やさしいデリバティブ
1 デリバティブってなんだろう?
1-3 デリバティブの特徴と利用法
デリバティブの特徴
デリバティブの主な特徴としては、次の2つがあげられます。
多様性
一般的な金融商品の場合
通常、株式などの一般的な金融商品への投資目的には、配当などの収益獲得がありますが、その醍醐味といえば投資商品の値上がりによって大きな利益が狙えることでしょう。
利益を得るための売買の鉄則は、右肩上がりの局面で安く買って高く売るというシンプルなものです。
デリバティブ商品の場合
デリバティブ商品は、右肩上がりに限らず、右肩下がりの局面、すなわち価格の値下がりによって利益が得られるものや、あるいは価格が上がりも下がりもしないときに利益を得られるものもあります。
この多様な商品性のおかげで、市場の動向に応じたさまざまな活用が可能になります。
利便性
デリバティブ取引に必要な金額は比較的少なくてすみます。取引当初に証拠金を払い込むだけで取引ができるなど、一般に取引時に発生する金額は原資産の取引よりも少額ですむためです。
通常、株式や債券の金融商品の売買には、多額の現金や株式・債券そのものを持っていなければなりませんが、それらは必要ありません。
それでいて、実際に株式や債券などの実物の金融商品を売買したときと同じような効果が得られます。
このような少ない投資金額で大きな取引ができることを「レバレッジ効果」といいます。レバレッジとは、小さな力で大きなものを動かす「てこ」のことを意味します。
デリバティブの利用方法
デリバティブの利用方法としては主にヘッジングとスペキュレーションの2つがあります。
ヘッジング(hedging)
株式や債券などの金融商品は、日々その価格が変動しています。これらを将来売買しようと思っても
- 「価格がいくらになるかわからない」
- 「保有している資産の価値が下落してしまうかもしれない」
といったリスクがあります。このようなリスクをマーケット・リスク(市場リスク)といいます。
マーケット・リスクの例
価格変動リスク | 株式や債券の価格変動 | ||
---|---|---|---|
金利変動リスク | 金利(預金金利、債券利回りなど)の変動 | ||
為替変動リスク | 外国為替相場の変動 |
リスクとは将来の不確実性のことで、この不確実性をできる限り排除しようとするのがリスクヘッジの考え方です。
デリバティブを利用したリスクヘッジの例
デリバティブは対象となる金融商品の現在および将来の一時点の金利、価格と強い関連があります。
資産運用等においてデリバティブをうまく併用すれば、マーケット・リスクを一定範囲に抑えること、つまりリスクヘッジが可能となります。
例えば、ある会社の株式を保有していたとしましょう。株式を保有すると、株価が下落してその価値が下落してしまうかもしれないリスクが伴います。
早々と売却して損害を未然に防ぐこともできるでしょうが、愛着のある企業だから後援し続けたいとか、大切な祖父の遺産だとか、もろもろの事情でその企業の株式を手放したくないケースもあるでしょう。
では、この価格変動リスクに対して、なすすべはないのかというと、そうではありません。株式デリバティブを同時に行うことで、保有株式の価格変動リスクをヘッジできます。
リスクヘッジの方法
以下のページも参考にしてみてください。
スペキュレーション(speculation)
デリバティブはスペキュレーション(投機)の手段としても利用されています。
スペキュレーションとは、純粋にデリバティブ価格の値上がり、値下がりを見込んで取引を行い、短期間で利益を得ようとする取引のことです。
このような取引を行う人々のことを、スペキュレーター(speculator:投機家)と呼ぶこともあります。
少ない投資金額で取引が可能であるというデリバティブの利用効率の高さが、スペキュレーション取引が活発に行われている大きな要因となっています。
デリバティブは、必ずしも原資産の価格変動と同一方向に価値が変動するものばかりではありません。
原資産の価格が下落したときに利益が得られるもの、あるいは、原資産の価格が大きく動かないときに利益が得られるようなタイプのデリバティブもあり、さまざまな投資戦略を可能としています。