やさしいデリバティブ
3 オプション取引
3-1 オプション取引とは?
オプション取引とは、「権利」を売買する取引のことをいいます。「権利」を日常の生活で例えると、下記のようなイメージです。
- 海外旅行のオプション・ツアーなら、参加するかしないか、どちらでも好きなほうを選択できる
- 携帯電話のメールやインターネットサービスのオプションは、利用しても利用しなくてもよい
- パソコンの購入などで、外部スピーカーなどの周辺機器をオプションで付けたり付けなかったりできる
これらの場合の権利(オプション)は、「自分の都合に合わせて使うか使わないか決められる選択権」です。
デリバティブのオプションは?
デリバティブのオプションも、同じように「選択権」です。
何を選ぶ権利かというと、ある金融商品をあらかじめ決めておいた価格で売買するかしないかを選べる権利です。
ただし、旅行やインターネット等のオプションが無料サービスやおまけではなく、利用するのに追加料金がかかるのと同じように、このデリバティブのオプションもタダではなく、権利を手に入れるためには代金を支払わなければなりません。
オプション取引のイメージ
ケンタくんは、○△社の株式を購入したいと考えています。現在の株価は1株5,000円ですので、100株ほど購入するとなれば、500,000円が必要ですが、残念ながらこの資金の目途が付くのは6カ月後です。
ケンタくんは、6カ月後の株価はもっと値上がりしているかもしれない、と心配です。とはいえ、1株5,000円で買うという約束はしたくありません。
なぜなら、もし6カ月後の株価が5,000円以下に値下がりしていた場合にも、約束の5,000円で買うことになると思うと、気が進まないからです。
そこでケンタくんは、「6カ月後に5,000円で○△社の株式を購入できる権利」を買っておくことにしました。
6カ月後、ケンタくんは持っている権利を行使して○△社の株式を5,000円で買うこともできるし、買わなくてもいい、つまり、権利を行使するか、それとも放棄するか選択できます。
このとき選択の基準となるのは、そのときの株式市場での○△社の株価です。
パターン(1) 値上がり
6カ月後、心配していたとおり、○△社の株式は株式市場で6,000円に値上がりしました。
このとき、ケンタくんは、○△社の株式を取得するためには、株式市場で、6,000円で購入するよりも、持っている「5,000円で買う権利」を相手に行使して購入するほうが得ですね。
なぜなら、そのときの株式市場の価格で買うよりも、1株あたり1,000円(6,000円-5,000円)ほど安く買うことができるからです(実際には、「5,000円で買う権利」を手に入れるために支払った代金分、ケンタくんのもうけは1,000円より少なくなります)。
パターン(2) 値下がり
○△社の株式は6カ月後の株式市場では4,000円に値下がりしました。
この場合、ケンタくんは、○△社の株式を取得するには、持っている「5,000円で買う権利」は行使せず、通常の売買のとおり株式市場で、市場価格(1株4,000円)で買うほうが得です。
ただし、この場合「5,000円で買う権利」を手に入れるために支払った代金分は、損失になってしまいます。
先物取引とオプション取引の違い
先物取引とオプション取引は、将来の売買に関する取引という点でよく似ています。
しかし、先物取引は将来売買することを「約束」する取引であるのに対して、オプション取引は売買できる「権利を売買」する取引です。したがって、先物取引は、将来必ず売買が発生しますが、オプション取引は、将来売買が発生することもあれば、しないこともあります。
また、先物取引では、「約束の価格」と売買時の市場価格の関係によって、得することもあれば、損することもありますが、オプション取引では、権利行使による売買で得をするときだけ権利を行使し、損をするときは権利を放棄することができるため、損失が抑えられます(損失は、権利を手に入れるためには支払った代金に限定)。
権利行使できるオプションのタイプ
権利行使できるオプションには、以下のようなタイプがあります。
- ヨーロピアンオプション…権利行使が満期の1回だけできるタイプ
- アメリカンオプション…満期までのいつでも権利行使できるタイプ