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おかねのシンポジウム2004

『地元発信。元気な未来はみんなでつくる』

パネルディスカッション

各地で高まる生涯学習の取り組み

藤田 われわれお話を展開させる意味で、学びの中に大変幸せを見出していらっしゃる活動をみつけまして、映像でこれを取材しています。ご覧下さい。

資料VTR(2)

静岡市の清見潟(きよみがた)大学塾での取り組み
・高齢者が望む限りその知識欲に応える生涯学習のシステム。人と人とをつなぐネットワークを作ることの必要性から誕生。
・高齢者を中心に900人の市民が参加。
・教える生きがいを求める声に応え、教授も公募。

藤田 堀田さん、シニアの方々が大変勉強熱心でいらっしゃるという姿をご覧頂きました。いかがでしょうか。

堀田 シニアの方たちは戦争で子どもの頃勉強させてもらっていないから、今の子と違います。今、穴埋めしようと頑張っているんです。清見潟のような事業は、20年以上前に文部省が旗を振り全国各地でスタートしたのですが、このように素晴らしく続いているところと、なんとなくしょぼくれてしまったところとあるようです。

どこが違うかというと、お役所が旗を振っているところはしょぼくれてしまっているんですよね。市民が自分たちでやるぞというところは続いています。

そしてそういう中で学んだ方々には2通りあって、勉強オタクみたいな人がいるんです。勉強さえすれば満足、それでおしまい。それはそれでいいんですよ。本人は楽しいんですから。けれども一方で、学んだことを生かしたいという方もいます。

簡単なのは先生になってしまうことです。それから、不登校になりかけている子を救うとか、環境の分野を学んだから環境の活動を始めるとか、福祉の活動をするとか、そういった活動に自分の学んだことを生かしている方のその後の知識の伸び方は素晴らしいです。

私どもの団体もボランティア活動を盛んにする活動をやっていますから、たくさんの団体が発足し伸びているのを知っていますけれども、そこのリーダーたち、とくに女性の方がすごいですね。

ずっと専業主婦をしておられた方が、最初は人との付き合い方や人間関係の作り方を学ばれ、そのうちに福祉のあり方、行政はここが足りないなどということを学ばれ、税金の使われ方を学ばれ、そして外国はどうしているのだろうということに関心を寄せられます。2、3年もしたら外国へ行って、外国の福祉制度まで学んでこられます。本当に感心します。

藤田 シニアの元気が若者たちに刺激を与えるという効果はあるでしょうか。

堀田 若者たちと交流しているシニアもおられます。今たくさんある空き教室に、おじいちゃん、おばあちゃんが集まっているところがあります。すると、保健室登校の子がおじいちゃん、おばあちゃんの部屋へ登校するようになり、色々学んで元気を取り戻していきます。

おじいちゃん、おばあちゃんは子どもたちに知恵を伝授するのに最高です。親は、勉強しなさい、早くしなさいとそればかりだからだめです。おじいちゃん、おばあちゃんはほめて、ゆっくりと接するから、子どもたちは本当の勉強をするんですね。

河合 人間って学ぶとか進歩しているとかいうのが嬉しいことだから、清見潟塾はずいぶん上手くやられたと思いますね。それに市民がだれでも先生になれるっていうのが素晴らしいですね。しかも生徒が集まらなかったらポシャるというのもいいですね。大学でもやったらどうでしょう。それともう一つ、役所が旗振ったらだめですね。役所は縁の下の力持ちに徹しないといけない。ときどき、縁の下の力なしになったりしますけどね。

藤田 兵庫県で中学生たちの学びに大きな可能性をご覧になったということですが。

河合 兵庫県では「トライやるウィーク」といって中学生が一週間社会へ入っていって実際に職場を体験するというのを思い切ってやったわけです。はじめ非常に危惧されたんですが、中学生がよくやるんですよ。はじめは戸惑っているんですが、一週間経つとよくやるんです。

ペンキ屋さんに行きたい子はペンキ屋さんに行き、保育園に行きたい子は保育園に行きます。そうすると、受け入れた大人たちが言うんです。「最近の中学生を見直した」と。最近の中学生というと、人殺しに来るんじゃないかと思っているんですけれども、これは冗談ですが、とにかく「実にいい」と。

もっと面白いのはね。中学生に聞いたんですよ。すると「最近の大人を見直しました」と言っていますね。だからお互いに経験して見直していて、素晴らしいと思います。

大平 大阪市は24区のすべての小学校の教室を使って「生涯学習ルーム」というのをやっています。今年で14年目になります。この「生涯学習ルーム」の運営には、生涯学習推進員を委嘱しまして、これまで1,000名を超える方々がすべてボランティアでやってくださっています。

なるべく地域の方々の目が学校に向くように、学校の教室を使って地域の方が、太極拳や語学などの教室を開設しています。人気のある講座には200人とか300人も集まります。高齢者もたくさん入っておられます。

これから益々高齢化社会に向かうのですから、高齢者にできるだけ元気に幸せに過ごして頂きたい。そういうことも含めて、講座がどんどん大きくなっているのは非常にいいことだと思います。知識を得て、教える側に回ったら、それがまた生きがいになっている方もたくさんおられます。子どもたちも、よそのおっちゃん、おばちゃんからだと素直に聞けるということもあり、良い効果があります。

藤田 大平さんが「地域の教育力を大切にする」と発言されていますが、それは、多くの家庭の現状を考えればこそということでしょうか。

大平 最近家庭の教育力が極端に落ちています。自分の家庭で、子どもたちを教育できない。昔はおじいちゃん、おばあちゃんがいて、子どもが泣いているとおなかがすいているとか、いろんなことを教えてくれたのですが、今は核家族になり、そういう知恵を授けてくれる人がまわりにいない。虐待が増えているのもそこに原因があると思います。

子どもは家庭や学校だけでなく、地域全部で育てることが必要です。子どもはその家族のお子さんかも知れませんけれども、みんなの財産であり宝だという気持ちで、みんなで子育てをしてもらえたら、子どもも健やかに育つと思いますので、そちらの方に力を注いでいきたいと思っています。

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