おかねのシンポジウム2004
『地元発信。元気な未来はみんなでつくる』
パネルディスカッション
元気な未来はみんなでつくる
藤田 ただいまから「『知るぽると おかねのシンポジウム2004』地元発信。元気な未来はみんなでつくる」のパネルディスカッションを始めます。
日本では、お金の話を持ち出すと「金銭づく」と見られたり、「武士は食わねど高楊枝」とお金や経済のことを気にしないことを美徳とするような価値観が長く支配的であったように思います。しかし、最近は、お金を生かして使うことが、個人にとっても社会にとっても大切だと考えられるようになっているようです。
アメリカでは1980年代から青少年を主に対象にした金融教育がスタートしています。日本でも最近お金を生かして使うことを身に付けるための金融教育が始まっています。
資料VTR(1)
知るぽると塾(中央区の小学生高学年を対象とした体験学習)の紹介
アメリカの金融教育の取り組み
・体験型経済教室Exchange Cityの模様
・ジャンプスタート個人金融教育連盟常任理事レバイン氏へのインタビュー
藤田 金融教育を推し進めることは、地域の力を後押しすることになる。これこそ、今日のディスカッションの志(こころざし)です。お金のことを知ることは、お金をいきいきと使うもとになる、あるいは、元気な未来はみんなでつくる道に通じるのではないか、という視点です。
今日は、こうしたテーマでお話し合い頂くにはまたとないお顔ぶれにそろっていただきました。さわやか福祉財団理事長の堀田さん、今の時代、幸せとはどんなものなのでしょう。また、みんながどうしたら元気になれるのでしょう。
堀田 難しいご質問ですが、キーワードは「自己存在の確認」だと思います。自分の存在を確認できることが幸せだと思います。どんな方でもいろんな能力を持っておられる。その能力を発揮して、生きていて楽しいと人生を肯定できることが基本的な幸せだろうと思います。
そのためには自分の能力をもっと開発し、発揮したい。そして色々な方から「あなたがいることが素晴らしい」と認めてもらってはじめて、生きていてよかったなあと思えるんですよね。
藤田 大阪市助役の大平さんは大変波乱に富んだ青春時代を過ごされ、いまや法律家となって青少年の理解者たらんと幅広く活躍しておいでです。「元気な未来はみんなでつくる」、このテーマに即していかがでしょう。
大平 やはり「お互いを理解する」ことが大前提だと思います。大阪市には年末に大変賑わう黒門(くろもん)市場というところがあります。私達は普段、スーパーで切り身の魚などを目にするのですが、もともとの原型を見る機会があまりないと思います。そこで、その黒門市場では、修学旅行生を受け入れ、生徒さんが実際に八百屋さんとか魚屋さんの格好をして物を売るんです。
その感想には、こんなことをするのは初めて、ここで学んだことがすごく大きいとみなさん本当にいい答えを書いてくれています。それは、今まで知らなかったことを理解し、結果的に金融教育にもなっているということで、いろんな効果があります。
これからは商店だけではなく、中小企業の町工場などにも子どもたちが行って、どういうふうに工場が経営されているかなど実地で理解するようになるといいですね。
藤田 河合隼雄さんは、文化庁長官でいらっしゃると同時に、臨床心理学の蓄積から、誠に幅広く社会に向かって発言されていらっしゃいます。河合さん、人の生きる力、真の幸せについてどうお考えですか。
河合 私は「好きなことをまずやる」ということだと思います。そのとき少し辛抱が要ります。「石の上にも3年」と言いますから、まあ3年くらいやってみますと面白くなってきますし、生きる力もそこから出てくると思います。
藤田 今度は日銀総裁の福井さんです。実は私、NHKの金融担当記者をしている頃から、福井さんには若干のお付き合いを願っております。福井さんは、日銀の備えている権威をあまり感じさせない、優しいお人柄でいらっしゃいます。新しい時代の幸せとは、福井さんはどんな風にお考えになっておられますか。
福井 戦後40年以上もかけて、われわれは日本を、特に経済の面で素晴らしい国にしてきたと思います。しかしそのやり方は、戦争に負けた後、アメリカとかヨーロッパなどの先進国の見本があって、それに追いつけ、追い越せ、という、いわば「テキストブック・アプローチ」だったと思います。
いまや日本はこれを卒業し、世界の先頭に立って新しい価値を作り出していく時代を迎えています。これは、なかなかむずかしく、テキストブックがないわけですから、ずっと遠い空の彼方をぼやっと眺めているだけでは、普通の人には何もできない。
良い国を作るというのは、天才一人に頼るわけにはいかないので、みんながこれをやらなければいけない。私は、これはやっぱり、一人一人の胸の中に眠っている良いものを見いだしてこれを引き出す、という極めて平凡な作業だと思います。
先ほど来、お話がありました「自己存在の確認」、「お互いのことを理解する」というのはそういうことだと思います。「よく勉強して他人を正しく理解する」、「他人の良いところを理解して自分が謙虚になる」、それでなければ心豊かに前進できないと思うのです。