金融経済教育を考えるつどい
第2部:ディスカッション
自己責任を持って、私が主役。新しい経済と社会作りが始まっている。
だから小さい時からの金融教育が必要だ!
学校協力勝手連と地域通貨は社会を変える?
野中 堀田さんは、アレッと思ったら自分が少し変わってみる、ということを通じて世の中をここまでお変えになりました。気づくと実は私たちが社会の主人公なのだ、というお話を聞かせていただけませんか。
堀田 私共はボランティア活動を広めるボランティアを行っていますが、私たちにとってこの10年はまさに輝かしい成長の10年でした。どんどんと伸びて、仲間が増えて、張り切ってやってくれる。それは全部、自分が主人公という生き方なのですね。
椎名さんもおっしゃいましたが、人のためにやるんだけれど、それが同時に自分の喜びであり、生き甲斐です。そういう主人公です。財団には20幾つかのプロジェクトがありますが、そのうちの二つについてお話をさせていただきます。
一つは学校協力勝手連です。これは学校に勝手に押しかけてできることをやろうよ、というものです。「今日は放課後、こんな勉強をしよう」と言って、勝手に押しかけていくのです。すると進んだ学校は「この空き教室を地域の方どうぞ使ってください」ってね。
だから、地域のおじいちゃんやおばあちゃんが朝から学校に行ってますよ(笑)。それでソロバンとかおはじきとかトランプとか、自分の得意なものを教えます。休み時間に子どもたちが行けば話は弾みますし、子どもたちにとってはとてもいい高齢者理解、人間理解です。それと自分で進んでやりますから自信がつくし楽しくて元気も得る。まさに日本版ジュニア・アチーブメントと思っています。
もう一つ、今日のテーマとの関連性で言いますと、地域通貨―私共は時間通貨と呼んでいますが、これを一生懸命広げています。これは地域で勝手にお札を発行してましてね、全国でそんな団体が300近くあるのです(笑)。地域で2~30人が集まって、北海道栗山町のクリン、宝塚のヅカ、愛媛のダンダン、富山のドラーというように、勝手に名称を付けています。
仕組みはたとえば30分券、1時間券などがあって、たとえば「今晩音楽会に行くから、幼稚園へ子どもを迎えに行って、ご飯食べさせてお風呂に入れといて。3時間券でお願い」とか、寝たきりのおばあちゃんが高校生に、「帰りにお買い物してきて、はい30分券」というように、地域相互の助け合い、ボランティア活動なのです。
新しい価値の発見、挑戦が始まっている
細野 総裁は地域通貨をどう思われますか。
福井 中央銀行は地域通貨が大嫌いかといったら、そうではありませんよ。これは、非常に嬉しい話です。先程、お金はいきいき使うということを強調しましたが、日本もまさにいきいきの時代に変わってきているのです。
過去10年は失われた10年といわれているのですが、私は絶対に失われた10年ではない、と思っています。過去の経済の姿は否定せざるを得なくなった。そのため過剰に投資した部分は失わざるを得ないけれども、新しい価値の発見、それを実現するために好んでやろうとする人がここ10年で相当増えています。新しい経済と地域作りがもう始まっているのです。
地域通貨という概念は、新しい価値を見いだした人たちが好奇心を持って集まった時、何か便利なものはないかと考えて自分たちで発見した道具だと思います。それはとても好ましいことです。日本銀行券はどこへ行っても通用する通貨ですが、特定の所にフォーカスしてそれを盛り上げたい時、特別の道具を使うのはいっこうに構わない。
地域通貨は、日本銀行券の延長線上、むしろ新しい香りのついたものが広がっていくということです。いきいきとした形で地域の社会と経済が発展すれば、これは国全体にとっても良い話です。
それから私は、経済学を100%は信用していません。日本経済について、アメリカから輸入した経済学で、すべてを語り尽くそうとしても、結局わかりにくいのです。
両国の経済社会は、みんなが望むところや夢も文化伝統も違うのですから、日本経済については日本の経済・社会そのものを見て、みんなの夢を感じながらでなければ説明ができないのです。日本経済に根ざした新しい経済学が作り上げられて、それで説明をすれば、わかるようになると思います。
椎名 今一番心配なのは、子どもたちが自分の頭で考える力を失いつつあるのではないかということです。子どもたちが自己責任で判断する場を、たとえば社会人も教育参加するなどして提供いていくべきではないでしょうか。