金融経済教育を考えるつどい
第2部:ディスカッション
「自己責任を持って、私が主役。新しい経済と社会作りが始まっている。だから小さい時からの金融教育が必要だ!」
学校教育ではなぜお金のことを学びにくい
野中 金融広報中央委員会は昨年から、年齢別にターゲットを絞って、どのような金融知識を身に付けたらいいのかということを、始められました。この辺りを総裁もバックアップしていらっしゃるのですか。
福井 全面的にバックアップしていますよ。チビッ子の時からお金がどんなふうに役立つか、つまり自分の夢を実現するためにはお金がいかにいい働きをするかということを、頭で考えなくても自然にわかるようになっていないと、大人になっても社会が夢に満ち溢れたものにならないのです。
お金が先に見えると、人間って卑しい心がそこに乗っかっていくから、いい社会にならないんですよ。お金の姿が見えなくても夢が実現する、お金が自然についてくるという運動法則が身にしみ込んでいることが非常に大事なんですね。
野中 椎名さん、ジュニア・アチーブメントという興味深い活動のお話を聞かせてください。
椎名 ジュニア・アチーブメントは1919年にアメリカで始まって、日本には95年に導入されましたが、最大の特色は企業の人たちがボランティア活動で学校へ出掛けて行って、子どもたちが社会や経済の仕組みを面白く学ぶためのお手伝いをするというものなのです。
野中 テレビのニュースで拝見しました。
椎名 あれは、品川区の協力で行ったスチューデント・シティというものです。小学校の5年生が学校の中にお店を設けましてね、子どもたちはお店の店員になって実際の仕事をするのです。それで儲かるとか損をするということを体験するのですが、子どもたちを見ていると一生懸命赤字を出さないための工夫をしていますよ。
子どもたちが目を輝かせて「うぉ~、楽しい」って言いながら、社会や経済の仕組みを学んでいるのは、すごいなと感動します。それにお手伝いに行っている僕たちの喜びが、とてつもなく大きい!日本でも「お金って汚いもの」という感覚から抜け出して、学校教育の中でお金や経済の仕組みを教える必要があると思います。
野中 子どもたちはワクワクしながらどんな仕組みの中で学校へ行けるのか、ご飯を食べられるのかなどを体験できますね。でも保護者の方々には「子どもにお金のことなんか」という意識がやはり強いですよね。
赤田 確かにそうです。お金と性教育は寝た子を起こすというのか、学校教育の中ではなかなか難しいですね。ただ性教育の方はある程度保護者の理解が得られて取り組んでいるのですが。
これまでの学校教育は入学試験対策型の知識中心で、それじゃあいけない、と文部科学省も昨年から体験型の総合的な学習の時間を新学習指導要領の中に設けました。お金に関することを体験型学習の中で学ぶことができればいいのですが、現時点では先生方がその知識をお持ちではない。
椎名さんのお話で企業の方々がボランティアで教えてくださるシステムがあることを初めて知りましたので、これなら生きた経済が子どもたちにも体感できますね。今後は意図的にこういうものを作っていかなければいけないのだと感じました。
野中 よかった! 参加していただいて。細野さんの『経済のニュースがよくわかる本』は、なんと経済本で日本初となるミリオンセラーに。なぜこんなに売れるとお思いですか?
細野 僕は主に中学生や高校生向けに書いたつもりだったのですが、読者の年齢層で圧倒的に多いのが60才代以上の方。その感想の中で一番多いのが「実は今まで何もわかっていなかった。でもいまさら聞けないから、わかったふりをしていた」というものでした。
経済知識を解説するものは多くあっても、断片を示すだけで、「こうだからこうなる」というような、一つひとつを論理立てて解説するソフトがなかったんだと思います。つまり、これまでの読者は知識を知恵に変えることができなかったんです。
だからニュースを見てもわからないし、情報が判断できない。僕の本は、毎日のニュースの意味を本当にわかるようにしたことが、売れた要因だと思います。