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コラム相続税と贈与税の税額はどうやって決まるの?
相続税
(「正味の遺産額」の計算)
相続税の税額を計算するには、初めに「正味の遺産額」を把握する必要があります。
まず、不動産(土地・建物)の評価額や金融資産(預貯金や有価証券等)、生命保険の保険金などを合計した遺産総額から、債務や葬儀費用などを差し引きます。
そこに3年以内の暦年贈与財産等(2024年からは7年以内)や相続時精算課税を適用した財産を加算すると、正味の遺産額を算出できます。
(不動産の評価額)
このとき、不動産は相続税路線価を用いるので、実勢価格よりも低額になります。
相続人が居住しているなど一定の要件を満たせば、「小規模宅地等の特例」によって土地の相続税評価額を最大80%減額できることもあります。
(相続税の計算例)
-
正味の遺産額から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を差し引いて、課税遺産総額を算出する
1億円-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円(A)
- 小規模宅地等の特例を使わなくても、この金額がマイナスの場合は相続税がかからない
-
遺産を法定相続分(注1)通りに取得したと仮定して、課税遺産総額を按分する
妻:(A)×2分の1=2,600万円
子①:(A)×4分の1=1,300万円
子②:(A)×4分の1=1,300万円- (注1)
- 「法定相続分」とは、民法で定められた相続財産を受け取る割合のこと。例えば、相続人が配偶者と子1人であれば、配偶者が2分の1、子が2分の1になり、配偶者と子2人であれば、配偶者に2分の1、子2人それぞれ4分の1ずつとなります。
-
按分した額に下記の速算表の税率をかけて控除額を差し引き、相続税額を算出。その額を合算する
妻:2,600万円×15%-50万円=340万円(B)
子①:1,300万円×15%-50万円=145万円(C)
子②:1,300万円×15%-50万円=145万円(D)
(B)+(C)+(D)=630万円(E)相続税の速算表 法定相続分に応じた
取得金額税率 控除額 1,000万円以下 10% - 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 - (出所)
- 国税庁HPより作成
-
実際に取得した相続割合で按分する
妻:(E)×(8,000万円÷1億円)=504万円
子①:(E)×(1,000万円÷1億円)=63万円
子②:(E)×(1,000万円÷1億円)=63万円
-
税額控除を反映すると実際の納税額が分かる
妻:「配偶者の税額軽減(注2)」の適用で0円
子①: 63万円
子②: 63万円
- (注2)
- 配偶者の税額軽減のみ適用があったとして計算。
税額控除で代表的なのは「配偶者の税額軽減」で、配偶者の場合は相続する財産が1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額まで非課税になります。
贈与税
1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与額から、基礎控除110万円を引いた額に下記の税率をかけ、控除額を引けば求められます。
贈与税の税率は2種類あり、1月1日時点で18歳以上の子や孫(直系卑属)が父母や祖父母など(直系尊属)から贈与を受けた場合は「特例贈与財産用」の税率を、それ以外は「一般贈与財産用」の税率を用います。
(18歳以上の人が父母や祖父母などから贈与を受けた場合)
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
- (出所)
- 国税庁HPより作成
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
- (出所)
- 国税庁HPより作成
この記事は2023年3月時点の情報に基づいています。実際に贈与を行う際は税理士など専門家の助言を受けることをおすすめします。