おかねのね
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モノづくりに携わる人たちは、なるべくお金や時間をかけずに、良い製品を安全につくるために、さまざまな努力や工夫を行っています。
例えば、自動車の部品をつくる工場では、金属の材料をむだ使いしないように、大きな部品を切り取った後の残りの部分を使って、小さな部品をつくる工夫をしています。材料にかかる費用をできるだけ抑えることはもちろん、作業中の歩く距離を一歩でも少なくしたり、必要な道具を取り出しやすいように置き方を工夫したり、姿勢を楽にしたりするなどのアイデアを出し合い、改善に向けた活動に取り組んでいます。
これらの活動においては、単に費用を下げるだけでなく、製品の品質向上や納期の短縮などとの両立が課題となります。品質を優先すると費用と時間がかかり、費用を優先すると品質が犠牲になりがちです。あちらを立てればこちらが立たずという状況は、モノづくりの現場に共通する課題です。
経費削減や利潤優先が行き過ぎると、要求される機能や性能基準を満たしていない商品が出回ったり、作業に応じた保護具の着用などの安全対策がおろそかになって事故が起きたりしてしまいます。そのため、設計段階まで遡った見直しや、完成後の検査の手法などの工夫が日々行われています。
農業に携わる人たちも、さまざまな努力や工夫を行っています。お米や野菜を育てる時には、作物が病気にかかったり枯れたりしないように、薬剤で予防するなどの対策が取られます。病害虫や雑草の対策で、畑のうねがビニールやポリエチレンなどのフィルムで覆われている様子を見たことはありませんか。
また、良い品質のものを「安定的に作る」ために、水や肥料の分量、温湿度など季節や天候を踏まえた作物の環境管理に気をつかっています。この「安定的に作る」ということは、どの農作物においても共通する難しい課題です。豊作になりすぎると価格が下がってしまいますから、収穫高を抑制するための対策も必要です。果物の栽培において、行われる着果調節(主な枝を残して不要な枝を剪定する)は、収穫する果物の糖度が増しておいしくなるという効果も生み出します。
トレード・オフ
ある選択をすることで別の事柄が犠牲になる状態をトレード・オフといいます。工業製品の費用と品質のほかにも、農薬の使用と環境への影響、住まいの広さや間取りと家賃、自動車の車種やグレード・装備と価格の関係など枚挙に暇がありません。
同時に達成することが難しい課題であっても、できるだけ妥協せず、後悔のない納得の行く解決策を考えられるようにしたいものです。
小さなうちから自分の進みたい方向を見い出し、選択する訓練を積み重ねることが、将来の自立につながる力を養います。