先生のための金融教育セミナー
2022年度 先生のための金融教育セミナー
ハイブリッドセミナーの内容
講義
「私たち中学生で会社をつくろう」模擬起業体験を通して、経済の仕組みを学ぼう
春日部市立武里中学校 小谷 勇人 教諭
本日は、私が執筆者として関わった金融広報中央委員会発行の中学生向け社会科(公民的分野)教材『私たち中学生で会社をつくろう』を活用した授業についてお話しさせていただきます。
日本の開業率は近年ずっと横ばいで、欧米諸国に比べて低い状態が続いていますが、その要因として、日本人は失敗を恐れる傾向が強いことが挙げられると思っています。起業家教育には、チャレンジ精神や積極性、自己肯定感などを高める効果が期待できます。日本の現状を変えていくためにも、起業家教育を広げていきたいと考えています。
本教材は、起業を模擬体験する活動を通して、経済活動の意義や金融の仕組みなどの市場経済の基本的な考え方や、企業の役割と責任などを理解し、自らの問題として捉えることを目指しています。SCENE 1〜15のワークシートで構成し、15時間での実践を想定しています。中でも下記の6つのワークは特に大事に実践してほしいと考えています。
- SCENE 5 企業ってなんだろう?
- SCENE 7 企業は社会に対してどのような責任を負っているのか?
- SCENE 11 企業間の競争にはどのような役割があるのか?
- SCENE 12 金融機関はどのような時に利用すべきか?
- SCENE 14 新商品説明会を行ってみよう
- SCENE 15 『会社をつくろう』の授業のまとめをしよう
ワークシートは、生徒に選択・判断させることを意識して作成しています。例えば SCENE 5では、個人事業計画書を作成して一人1分のプレゼンテーションを行い、社長になるか従業員になるかを選択します。 SCENE 11では他社との経営統合や連携を、 SCENE 12では銀行からの融資をそれぞれ検討します。 SCENE 14では成長が期待できる企業への模擬投資を行い、 SCENE 15では利潤の分配を考えさせます。一方で、企業は利潤を追求するだけでなく社会貢献も行っていることを理解させるために、 SCENE 7では企業の社会的責任を考える活動を取り入れています。
本教材を使いたくても時間が足りないという場合には、カリキュラムマネジメントで、消費者や労働者の権利に関する SCENE 3、4、9、10は家庭科で学ぶこととする、 SCENE 5、6、7、8、11、12の起業体験の部分のみを扱い6時間で構成するといったアレンジもできます。
教育において正解は一つではありません。ぜひ先生方の中のベンチャー精神を発揮して、失敗を恐れずにチャレンジしていただきたいと思います。