平成14年度「全国金銭教育協議会」
(2)分科会報告、意見交換
意見交換
金井 本日の締め括りとして、金銭教育を総合的な学習の時間のなかでどのように展開していけばよいか、助言の先生方から一言ずつご意見をいただきます。
梶原 金銭教育を深めていくには総合的な学習の時間だけでは無理で、各教科共に取り組んでいかないと難しいという感想を持ちました。
金銭教育という目標を縦割りの各教科のなかに横に並べてみます。そうすると各教科とも、どの発達段階でこの目標と合致するところが出てくるかがわかり、金銭教育のねらいと各教科との展開の仕方が見えてくるはずです。そして関わりが明確になったところを重点的に深めていく。こういう試みが大切だと感じました。
宮坂 最近の一連の教育改革は、私のような高年齢の人間からすると戦後教育と言われたものと、形の上で近い気がします。その意味で戦後の新教育の問題点をきちんとおさえておく必要があると思います。
1つは、あの当時の教育は、戦後で問題は山積していたのに、リアリズムが欠落していました。もう1つは、さまざまな体験をさせれば、子どもたちの心に何か残るはずだという楽観論。少なくとも戦後の新教育の2つの弱点は、今度の総合的な学習の時間で乗り越えていかなくてはいけないと思います。
この観点から総合的な学習の時間と金銭教育の関わりを考えると、金銭マインドが欠落していることを懸念します。地域興しのためのさまざまな活動を体験する場合も、金銭を媒介にすることで真実や事実がリアルに見えてくる。そのことが金銭教育のメリットではないかと思っています。
村尾 筑紫野南中学校の発表のなかに「自分探しカード」という課題設定をして、そこから「自学」というテーマを展開している紹介がありました。私はこの辺りが総合的な学習の時間の基本的な課題ではないかと思っています。お金や時間をどう使い、どういう情報を自分にインプットし、エネルギーの配分をどういうふうにして自分の生きる力を創り出していけばいいか。こういうことが最も本質的な課題として考えられると思っています。
そして、金銭教育のキーワードになるのは、貯めて使う、借りて使うということを、教育の場でどういうふうにうまく定着して意味づけをしていけるかだと考えています。
武長 最近、スローフードとかスローライフとか言われ、これは地域の伝統的な食材や暮らしを見直そうという考え方です。総合的な学習の時間のなかには自分の地域を愛するという大事なテーマがあり、地域の食材や観光資源といった地元にしかないものの特色を調べたり、先程、宮坂先生が言われた金銭マインドで学習していくことが大切です。
また地元で美味しい旬のものを食べて春夏秋冬の四季を感じるというようなことも含めて、郷里というのはやはり総合的な学習の時間や金銭教育の大きなテーマだと思っています。
金井 中央幼稚園の事例発表のなかに、子どもたちが模擬貨幣を作ったり、物を作ったりする活動を通して、友達や家族に喜んでもらうために作るというように変わってきたとありました。こういうことに私たちは励みをもって、児童・生徒が自分の人生を喜びや希望をもって切り開いていけるよう、お互いに希望をもってまいりましょう。