平成14年度「全国金銭教育協議会」
金銭教育の2つのねらい
それでは、学習指導要領における金銭教育について考えていきたいと思います。
まず学習指導要領を見るときには、教育の全体像を見なくてはいけないと思います。「学校における金銭教育の進め方」26ページには、「総合的な学習の時間」を利用して金銭教育を進めるにはどうすればよいかが書いてあり、ねらいを2つ挙げています。この2つは学習指導要領総則から転載したものです。
そのとらえ方ですが、教育全体の課題を大きく2つに分けて、子ども自身の能力を育てることと、外側の社会とか自然について理解を深めることとに分けて学習指導要領を見ますと、学習課題を組み立てやすくなるだろうと思います。
つまり、生きる主体の育成と生きていく主体である子どもがどういう世界に関わっていくかその両面から指導することになります。「総合的な学習の時間」のねらいは2つとも生きる主体の育成です。
金銭教育は自立能力を育てますから人間教育の土台になります。そして、自立して生きるということがはっきりしますと、自己責任についてもはっきりしていくことになります。
まず、自立能力を育てるという側面です。
小学校の「総合的な学習の時間」は主体を形成することに重点をおいた教育になっています。
「生活科」では自立への基礎を養う、と書いてあります。主体を育てるという面から見ると、「生活科」と「総合的な学習の時間」とはかなり性格が似ています。
小学校の「社会科」では、消費者としてどのように工夫して商店で物を買うかという学習を通じて、意思決定の基礎を養うことになっています。
次に「家庭科」ですが、物や金銭の使い方を自分の生活との関わりで考えること、とあります。それは自分が自立して、生きる能力を育てるという意味です。小学校のときからこういう訓練を経ますと自然に意思決定能力が育っていきます。そういうことを目指して指導するということです。
中学校の「社会科」の私たちの生活と経済では、金融の働きについて具体例を挙げて指導する、理解させるとなっています。ここで新しい動きがあれば、教科書に書いてある事例よりも新しいデータを使っていくことが必要になります。そういうことを通して金融商品を選択したり、自分の生活との関わりで考えたりする意思決定能力を育てていくことになるわけです。
高等学校の「家庭科」では、消費者として主体的に判断すること、意思決定の能力を育てていくことが強調されています。つまり、自立能力を育てる、選択能力を育てる、そして自己責任の意識を高めることが記されています。
また「特別活動」や「道徳」についても書かれています。文部科学省「生徒指導の手引き改訂版」には道徳教育は子ども自身の価値観の形成を直接目指す、と書いてあります。価値観を育てることは自立能力の核心にあるものを育てることですから、これも主体を形成するという大事な意味でとらえておくことが必要になります。
そしてもう1つが金融経済に関わる諸問題、つまり外側の諸課題です。
小学校の「社会科」では、産業と国民生活との関連を考えさせることになっています。自分の外側の社会でどのような産業がどのように国民生活と関わっているかの理解です。
高等学校の「現代社会」では、金融機関の働きの理解や金融の動きにどう対応するか、ということが課題になります。その場合、新聞だけでなく、インターネットやその他の情報の取り方とか判断の仕方ということについて、様々な方法で指導することができると思います。