平成14年度「全国金銭教育協議会」
(2)分科会報告、意見交換
梶原 康史(武庫川女子大学教授)
第3分科会(小学校)
発表があったのは、石川県輪島市立三井小学校と、愛媛県保内町立喜須来小学校である。
両校とも総合的な学習の時間を中核に据えて展開しているが、前者(三井小学校)は、1年目の徹底的な体験的学習に対して、大切なことを発見した。1つは、汗することは大切であるが、嫌々ながら働いても学習活動につながらない。活動や労働に喜びや充実感を得るようにする工夫が必要なこと。2つ目は、体験だけでは深まりが足りない。本から、先人から、地域の人からなど、さまざまな情報を得て思考を深める必要があること。
そのため、2年次からは、(1)同じ働くにもよく考えて働く-いつ、種を蒔けばよいのか。どうすれば作業が能率的かなど。(2)朝の読書、道徳の時間、地域の人々との交流などを通して、「知」の部分の深まりをめざすことにしたことである。
そして2年間を通して、ふるさとの自然と人々のくらしを考え、働くことの意味、収穫の喜び、自然の恵みへの感謝、無駄なく使い切ることの大事さなどを学ばせている。
後者(喜須来小学校)は、総合的な学習の時間を中核にしながらも、教科、道徳、特別活動の各領域の目標や内容をも考慮に入れ、それこそ総合的に学習を進めている。
生命や自然、ものやお金の価値に気づき、主体的に考え、取り組む態度を育むことは、社会科、家庭科、図工科などのねらいや内容である。生命や自然、ものやお金の価値を知り、大切にしようとする心情(節度、節制、自立、思いやり、親切、友情、信頼、助け合い、生命の尊重、勤労)を育てることは道徳の時間のねらいであり、内容であり、その実践力を育てることは、特別活動のねらいや活動である。
それら各教科、道徳、特別活動での金銭教育とかかわるねらいや目標を年間指導計画のなかで、時期を合わせ、それぞれの目標、内容を関連付けながら展開すれば、その実践的、自発的(個別的)な活動にかなり多くの時間が必要になってくる。
それを3年生の総合的な学習の時間の「ふるさとじまん大会」で発展し、身近な職業や仕事に関心を持ち、深め合うことに導いている。4年生では「暮らしやすい町|き・す・き」でごみの減量化やリサイクルについて考え、クリーン作戦を計画・実践している。5・6年生では「ふるさとフィールドワーク」で決められた予算で出店を計画し、グループごとに世界の料理を作っている。
大切なことは、総合的な学習の時間といえども「ものやお金を有効に活用する」ことのねらいから逸れないことである。