平成14年度「全国金銭教育協議会」
(1)講演:「学習指導要領における金銭教育の展開」
金井 肇 (元大妻女子大学教授)
金銭教育は時代の変化とともにますます重要になっているといえます。より効率的な金銭教育が行われるように、皆様とともに考えてまいりたいと思います。
金銭教育の課題
本日皆様と一緒に考えたいテーマは「学習指導要領における金銭教育の展開」です。すべての学校教育の基準になる学習指導要領をどう理解して生かすかということは、非常に重要な課題です。
教育に取り組むときには学習指導要領を後追いするだけではなく、社会的な背景やその進展を見てよりよく生かさなくてはいけません。
例えば、教科書には沢山のデータが出てきます。しかし、教科書が作られて教室に届く間には何年も経っていて数字はどんどん変わっていきます。また、その数字は子どもたちが社会に出る頃にはとうに古くなっています。
教科書は学習指導要領にのっとって教えるための教材ですから基準にしなければいけません。しかしそこに載っている具体的な数字は古くなる。だから数字については先生方は最新のものをプリントして配布しておられます。数字に限らず新しい変化は取り入れて、児童生徒が将来の変化に対応できるように育てるのが教育なのです。
文部科学省が教育方針で打ち出しているのは「生きる力」です。自らが生きていくために必要な諸能力を持たなければ、子どもは自分の人生をまっとうできません。
そこで、金銭教育の課題を改めて整理し直して、指導していく上での焦点をはっきりさせたいと思います。
まず、子どもが社会に出たときに何が必要で、自分はどう生きていくのか、ということを考える能力が必要になります。
金融広報中央委員会発行の「学校における金銭教育の進め方」の3ページに「金銭教育は『生きる力』を育てる教育です」とあります。人間として自立していく能力、自立能力の土台をつくることが金銭教育の一つの役割として書いてあります。
また、多様な金融情勢の変化に対応していく自立能力が強調されているのは皆様ご存知のとおりです。これに関連して、同委員会作成の「金融に関する消費者教育の推進に当たっての指針(2002)」にも、消費者の自主的な選択能力を高めていくこと、と書いてあります。