平成14年度「全国金銭教育協議会」
(2)分科会報告、意見交換
村尾 勇之(東京家政学院大学教授)
第2分科会(小学校)
今年の研究実践報告を聞かせていただくにあたって、2つのことを念頭においていた。
1つは、すでに総合的な学習の時間が始まり、各教科が学習指導要領に基づきながら金銭教育を活用してより効果的に教育目標を達成し、いま求められている生活者能力を育成するという課題にこたえるというこれまでの取り組みが、どのように変わってきたかということであった。そこには、総合的な学習の時間だから可能となる私なりの金銭教育の本質に関わる実践への期待があったわけである。
2つ目としては、金銭教育は、これからの社会において、さらに金融教育としての役割を担っていかなければならないのではないかという私なりの思いがあり、そうした芽をどこかに見つけることができるだろうかという点であった。
第2分科会では、秋田県の皆瀬小学校と鹿児島県の曽木小学校による実践報告を聞かせていただいた。金銭教育への取り組みは、研究主題の設定の仕方とその実践内容に基本的な特徴をみることができる。
最初の報告の皆瀬小学校は、金銭教育テーマを「互いの思いを深め合い、よりよい未来の創造をめざして-命や自然、もの、将来を大切にするこどもの育成-」とされ、さらに研究の目標(金銭教育の目標)を4項目あげている。
実践にあたっては教科として「生活、国語、理科、社会、家庭、図工」、道徳、総合、特別活動として「学級活動、児童会活動、クラブ活動、学校行事」、家庭・地域との連携の5つの柱を立てた取り組みが行われている。
曽木小学校は、研究主題を「ものやお金を大切にする子どもの育成-勤労体験を中心にした、感謝の心をはぐくむ教育活動の充実をめざして-」と設定し、実践内容として道徳、総合的な学習の時間、学校行事、勤労・生産体験活動、ボランティア活動、PTA活動の取り組みが紹介されていた。
皆瀬小学校は、テーマ設定が大きく目標との統合も可能かと思われたが、実践内容は全体にわたり充実したものであった。曽木小学校は金銭教育への直接的な主題設定から研究仮説・視点等に工夫がみられたが、金銭教育に関わる教科として社会・家庭での取り組みの紹介が望まれるところであった。
総じて、広義の金銭教育の実践は、それぞれの工夫による立派な成果に接することはできたのであるが、狭義の意味での「大切に使う-貯める-個人や家庭の生活をよりよくするために投資する」といった金銭教育の課題は、総合的な学習の時間において可能ではないかというのが、私なりの期待であった。こうしたところに「借りる」を含めた金融教育にも関わる今後の課題が残されているように思われた。