平成14年度「全国金銭教育協議会」
(2)分科会報告、意見交換
武長 脩行(椙山女学園大学教授)
第4分科会(中学校)
本年の2中学校は対照的であった。一方は小規模校、他方は大規模校で、地域環境の違いもあり、特色ある金銭教育を実践している。と同時に、高度情報社会は地域を越え進行し、例えば携帯電話の所有や利用、ファッションの動向等には生徒たちは敏感である。個別的にコメントしよう。
1.石川県珠洲市立宝立中学校
宝立中学校は能登半島の先端に位置し、農・漁業を中心とし、自然に恵まれ、生徒数は85名の小規模校である。生徒数が少ないだけ、個々の生徒の行動に目がとどき、きめ細かい指導ができる。
本校は研究仮説として「望ましい勤労観の形成」を設定した。2年生は外の企業等の事業所で「わく・ワーク(Work)体験」をすることにより勤労と収入の関係を実感した。農・漁業という親の働く姿が具体的に見える地域であり、地域の教育力を生かした取り組みでもあった。
3年生ではボランティア活動の老人ホーム訪問等種々のボランティア活動が行われたが、金銭教育の視点からは、ボランティア活動の時間を経済的価値で換算するような「量的な評価」の視点が欲しかった。これは「わく・ワーク(Work)体験」の評価にもいえることである。
勤労という実践的取り組みにどうしても力が集中し、その実践終了後の評価、特に収入という量の経済的評価の視点が欲しかった。
2.福岡県筑紫野市立筑紫野南中学校
本校は福岡市郊外のベッドタウンの新興住宅街に位置し、生徒数は951名である。研究主題を「人やものとの関わりを大切にする心豊かな生徒の育成」に設定し、大規模校の特徴を生かし、多様なプログラムを実施した。
個別教科では、2年生の「技術・家庭科」で、学校給食について、ゲストの栄養士から説明を受け、食の大切さを知る。また、1年生全員の「道徳」では、「ゴミ収集車」を通じて、公共の福祉、勤労の尊さを理解する。
特に印象的なのは、総合的学習の時間「筑南タイム」の取り組みである。校訓である「自学」を軸に、課題を個々人が設定し、活動を異学年のグループで行うというもの。33の講座案内を教師が行い、30人規模のグループに分かれる。「自分探しカード」で自分が追求したい課題を設定する(計画段階)。
次の段階は実践である。学内のさまざまな場所を使用したり、学外の施設訪問、外部講師の講義等を経験し、最後に振り返り段階で発表を行うという、3段階をたどる。生徒の関心を引き出し、異学年との交流、プレゼンテーション能力の醸成にもなる時間である。
また、本校では「自己教育力指導検査」により、全生徒の自己教育力の実態調査を行い、評価を行っている点も特徴的である。
ただし、金銭教育というテーマからいえば、本校の取り組みは多彩で、焦点が拡散していた。一部の学年、クラス、グループで金銭教育にしぼったプログラムを実施し、その評価を行うことを今後期待したい。